──若者がライブに行かなくなってしまったということでしょうか。
そうではなく、アーティストたちが二手に分かれた、という感じでしょうか。TikTokなどのネット側で仕掛けるタイプと、あえてSNS施策にはあまり手を出さずに地道にライブをやるタイプです。後者は、目の前のお客さんを大切に、一生懸命ライブをして、動員を増やし続けて、ファンクラブの会員数も増やしていきます。
実際、ライブシーンはまた盛り上がってきている、人が帰ってきている実感があります。
音楽ファンは、流行っている音楽をつまみ食いして聴いているライト層だけじゃないので、目の前の人がファンになってくれることを信じてライブパフォーマンスをしている人たちの方が、長期的には強いのかなと思いますね。
生で見て聞いて、ビビっとくるか
──利根川さんが、次世代のアーティストを発掘するうえで心がけているポイントはありますか。
自分が生で見て聞いて、ビビっとくるかどうかですね。
先の話にも通じますが、現代は、ライト層の音楽ファンであればあるほど、そのアーティストが生で歌っている姿をライブで見るのではなく、TikTokやYouTubeなどで音源を聞く「音源先行型」の人が多いと思います。「曲は知っているけど、アーティストの顔は知らない」という状況です。なんなら顔を出さないアーティストも増えてきていますよね。
ただ、個人的には実際にライブに足を運ぶことを大切にしています。生で聞くと「この人、音源より凄いな」と感じることがあります。そんなアーティストこそ、応援したくなるし、信じられるんです。
ライブは、多いときは週に5~6日行きます。ほぼ毎日ですね(笑)。新人だけでなく、ジャンルも年代も様々なアーティストを見るようにしています。
音楽フェスに行ったときは、できるだけ小さいステージに出ているアーティストを観るようにしています。例えばサマソニに行ったら、3万人以上を収容するメイン会場のマリンステージではなくて、1万人規模のソニックステージに朝から晩まで張り付くことも。フェスの主催者がイチオシしたいアーティストが集まっているステージだと思うので。
例えば、今年のサマソニで1日目のトリを飾ったイギリスのバンド「The 1975」は、2013年の初来日時にソニックステージで観て気に入り、日テレ時代に一緒に仕事をさせてもらいました。今やヘッドライナーにまで成長しています。こうした発見があるのが、フェスの醍醐味ですね。