経済・社会

2022.09.03 11:00

シャワーは週1回で十分? ガス不足で沸騰する欧州の省エネ論争

Photo by Katja Buchholz/Getty Images

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ユーロ圏経済の先行きをめぐって厳しい見方が広がっている。米国の金融サービス業「S&Pグローバル」発表の製造業の購買担当者景況指数(PMI)は、景気動向を敏感に反映する指標の1つだが、8月はドイツ、フランス、イタリア、スペインの主要4カ国で、いずれも好不況の分岐点とされる50を軒並み下回った。
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悲観論が勢いを増している大きな要因は、足元の天然ガス価格の上昇だ。欧州市場で天然ガスの指標価格とされるオランダTTF先物(9月限月)が、8月下旬、ロシアによるウクライナ侵攻直後の今年3月以来の1メガワット時あたり300ユーロ台乗せとなった。

物価上昇のリスクが高まるユーロ圏


今回のガス価格急騰劇のきっかけは、ロシアの国営天然ガス会社「ガスプロム」がメンテナンス作業を理由に、ドイツと結ぶパイプライン「ノルドストリーム1」を通じたガス供給を8月31日から9月2日まで一時的に止めると発表したことである。

「ノルドストリーム1」経由のガス輸送量はすでに最大容量の20%まで減少していたが、メンテナンス終了後も稼働停止を続けるなど、ガスを武器にロシアがさらなる揺さぶりをかけてくるのではないかとの懸念が強まって価格を押し上げた格好だ。
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英国、フランス、スペイン、ポルトガルなどを襲った今夏の熱波や干ばつも、ガス価格高騰に直面する各国には大きな痛手だ。電力の約7割を原子力で賄うフランスの多くの原発で配管の腐食が見つかり、点検作業などに伴って運転を停止していることもエネルギー危機に追い打ちをかける。

エネルギー価格の高止まりで各国はインフレ対応に苦慮。8月のユーロ圏の消費者物価指数は前年同月比9.1%の上昇となり、統計で遡ることのできる1997年以降の最高を記録した。米国の同指数の8月の伸び率(8.5%)をも上回る。

これを受けて、欧州中央銀行(ECB)は9月の定例理事会でも前回の7月に続いて利上げに踏み切る見通しだ。米国の中央銀行である連邦準備理事会(FRB)と同様、「物価の番人」としてインフレ退治の姿勢を鮮明にしている。

一方、外国為替市場では、ユーロを売ってドルを買う動きが先行。ユーロは7月に続いて8月に再び1ユーロ=1ドルの等価(パリティ)を割り込んだ。

ECBとFRBはともに金融引き締めで足並みをそろえるが、異なる2つの通貨の動きは「米国とユーロ圏経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の違いに起因する面が大きい」と市場関係者は語る。ユーロ安ドル高の進行は、スタグフレーション(景気停滞下での物価上昇)に陥るリスクが米国よりもユーロ圏で高まっている現状を映し出している。
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文=松崎泰弘

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