ただし成功の過程においては、資金調達、ステークホルダーとの関係、孤独や仲間からの裏切りなど、一般のビジネスパーソンとはかなり質が異なったプレッシャーを受けていることも少なくありません。
彼らは成功している間は賞賛されるものの、上手くいかなくなったら自己責任という一言で落とされてしまいます。起業家にはメンタルヘルスのリスクも伴うことは容易に想像ができます。今回は「起業家のメンタルヘルス」の話題を紹介します。
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起業後の環境の変化
最近は学生時代に起業をして、卒業後すぐに起業家の世界に飛び込む方もいます。一般的には企業に勤務しながらビジネスを学び、その後に起業する方が多いでしょう。
企業ではあらかじめ業務の分担ができているので、上司から指示される業務、もしくはジョブディスクリプション(職務記述書)に基づく業務を行うことが求められます。それに対して起業家は、特に「創業期間」といわれる起業後2年間に、いかに経営を軌道に乗せるかが最大の課題となります。それでは起業後には、仕事を含めた生活にどのような変化が生じるのでしょうか。まずは労働時間から見てみましょう。
起業後は労働時間が長くなった
起業後は1週間あたりの労働時間が4時間程度増える、すなわち月間では16時間ほど増加するという調査結果(2017年度新規開業実態調査 日本政策金融公庫)があります。上述の通り、企業に勤務していた時には体験することのなかったさまざまな業務が発生するので、労働時間が増えことは当然と思われます。
グラフ1:1週間あたりの労働時間
起業後は通勤時間が短くなった
在宅勤務の割合が増えることが影響し、起業後の通勤時間は短くなる傾向にあります。とくに通勤時間が30分未満の割合は、起業後は約8割(起業前は約5割)と通勤時間の負担が少なくなることがわかりました。
グラフ2:主な事業所までの通勤時間(片道)
起業に伴い充実した生活を送れるようになった
起業に伴う生活に関する変化の調査結果(「日本の起業環境及び潜在的起業家に関する調査」三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング)では、「家族との時間が取りやすくなった」、「ストレスが減った」、「趣味や学習の時間を持てるようになった」と、ポジティブな回答の比率が約4割を占めていました。
グラフ3:起業にともなう生活に関する変化
以上のデータを見る限りでは、「起業により時間的にも精神的に余裕が生じることで、充実した労働環境に変わった」と見ることもできます。次は起業家のメンタルヘルスの現状について説明をしたいと思います。