商品価値を正しく理解してもらうための購買体験
上記につながる二つ目のポイントは、ショールームにおける商品販売だ。本田氏が「目指すのはリユース家具市場全体のリブランディング」と語る通り、エコファニは家具の丁寧なディスプレイや魅力的なオフィスレイアウトの提案にこだわっており、商品がより魅力的に見えるようなショールーム作りに力を入れている。
価格はリーズナブルながらも質は高いと感じられる購買体験を提供することで、リユース家具市場全体のイメージを変えようとしているのだ。リユースやサーキュラーエコノミーといった環境価値を前面に押し出そうとせず、あくまで商品の魅力や提案力で顧客から選ばれているのが優れた点だと言える。
より小さく循環のループを回す
そして最後のポイントは、より小さな循環のループを優先しているという点だ。この「小さなループ」には二つの意味がある。一つは、製品をリサイクルするのではなく、できる限り製品価値を保ったまま循環させ続けるリユースというモデルを展開している点。そしてもう一つは、同じリユースだとしても大丸有エリアなどできる限り狭域における循環を優先することで、輸送に伴う環境負荷も抑えつつ、より顧客のニーズに沿った柔軟なサービスが提供できるという点だ。
この小さいループを優先させるという原則が、経済面・環境面の双方においてプラスを生み出している。さらに、エコファニの倉庫兼ショールーム自体も改修予定の自社ビルの空きスペースが活用されており、商品だけではなく事業そのものが既存資産を活用した仕組みとなっている点も魅力的だ。
取材後記
オフィス家具は、毎日使用する環境下でも長く安全に使用できるように頑丈に設計されているものが多い。その製品寿命の長さに対して、顧客の利用期間が短いというギャップが、まだ使えるはずの家具の廃棄という経済・環境の両面で「もったいない」状況を生み出していた。
エコファニはこの課題に目を向け、様々な事業者とパートナーシップを組みながら、リユース家具市場全体の活性化に向けた新たなビジネスの形を構築しようとしている。一方で、最近はオフィス家具メーカーも循環型の家具利用を実現するためのサーキュラーデザインの推進や、循環型PaaSモデルを模索する動きもある。
オフィス家具のサーキュラーエコノミー実現には、上流側の循環型設計も、無駄な廃棄を減らすための出口に近い領域のソリューションも、両方が欠かせない。また、ポストコロナ時代における働き方、オフィスのあり方の多様化とともに、オフィス家具に対するニーズも変わっていくことが想定される。こうした新しい価値が求められる時代の中で、エコファニが次にどのような展開を見せるのか。今後も同社の動きから目が離せない。
【参照サイト】
・エコファニ
※この記事は、2022年8月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。