ビジネス

2022.08.31 10:00

オフィス家具をリユース? 三菱地所の新事業「エコファニ」とは


──エコファニならではの強みは?

やはりテナントの入退去情報にアクセスしやすいため、仕入は非常にしやすい状態です。また、オフィス街の中心地にある既存の空室などを倉庫やショールームとしてうまく活用できるという点が、他社にはない強みにつながっています。


ショールームにある会議スペースのサンプル

──事業を始めてから気づいた課題や難しさ、今後の事業の可能性は?

難しい点としては、想定通りではあるものの、やはり在庫点数が増えてくるにしたがって管理の煩雑さや人手が増えることなどが挙げられ、より投資が必要になると考えています。

一方で、資源を循環させるというビジネスモデルの価値に共感してくださる方が増えている状況なので、これまで以上に商品やパフォーマンスの質向上に務めていく必要があります。また、有楽町の倉庫からの輸送距離が短い顧客と取引が出来ればより環境負荷を下げられるため、納品先の距離のデータ分析や可視化も進めています。

今後は、他の中古家具販売事業者と連携・共存の可能性を模索したいと考えています。オフィス家具をより長く使っていく、というメッセージを発信するうえで大事なことは、既存の方々と自社を比較することではありません。私たちが目指しているのは、リユース家具というマーケット自体をリブランディングし、成長させることなので、他のデベロッパーが同じ事業を展開することがあれば家具の在庫情報を連携してもよいなと思っています。



サーキュラーエコノミーの視点では?


サーキュラーエコノミーの視点からエコファニの事業を見てみると、多くの参考になる点があるが、その中でも特にポイントだと感じた点をまとめると、下記の3つとなる。

・経済価値とサステナビリティ価値の両立
・商品価値を正しく理解してもらうための購買体験
・より小さく循環のループを回す

経済価値とサステナビリティ価値の両立


一つ目のポイントは、エコファニの事業は顧客視点でも自社視点でもしっかりと経済価値とサステナビリティ価値を両立させているという点だ。リユース品とは言えまだまだ十分に使用可能なオフィス家具を、新品と比較しても非常にリーズナブルな価格で提供することで、できる限りオフィス什器の費用を抑えつつ質の高いオフィスを作りたいという顧客企業のニーズにしっかりと答えている。

また、デベロッパーという自社の強みを活かした事業を展開するだけではなく、個人向けの販売はパートナー企業などに委ね、社員はメインターゲットとなる大口の法人顧客にフォーカスするなど、明確な戦略を持つことで事業の開始当初から採算性を社内に示すことができたことも、スムーズに新規事業が離陸した要因となっている。

サーキュラーエコノミー型の新規事業ではなかなか収益性が担保できないケースも多いが、環境だけではなく経済性もしっかりと重視するという本田氏の姿勢は、多くの経営者や事業開発担当者にとって参考になるのではないだろうか。
次ページ > もう2つのポイントは?

文=和田麻美子

ForbesBrandVoice

人気記事