FBの捜査協力で注目、米テック大手の「中絶禁止法」への対処

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ネブラスカ州のティーンエイジャーの少女が、州法に違反して中絶を行ったとして刑事告訴された──。17歳のセレステ・バージェスは、母親のジェシカ・バージェスとともに成人として裁かれており、20週以降の中絶を禁止するネブラスカ州法を破った容疑で起訴され、裁判を待っている。

警察は捜査令状をとって彼女のフェイスブックのメッセージを入手したが、これは、中絶へのアクセスが制限されている州で、個人のフェイスブックの履歴が犯罪捜査に使われた初めての事例だ。米国では今年6月、最高裁によって1973年の「ロー対ウェイド」事件の判決が覆され、各州が中絶を禁止することが可能になった。ネブラスカ州は現在、妊娠20週以降の中絶を違法としている。

セレステは今年4月に妊娠23週で流産した胎児を、母親の助けを借りて密かに埋め、死体隠匿・遺棄や違法な埋葬に関連する3つの罪で7月に起訴された。地元の警察は、この件に関する密告を受けて捜査を行ったと現地の複数のメディアは報じていた。

セレステは当初、胎児を死産したと警察に話したが、警察は捜査を続け、彼女と母親のチャット履歴にアクセスするための捜査令状を裁判所から取得し、フェイスブックの親会社のメタに提出した。その結果、セレステが母親の助けを借りて、妊娠中絶薬を使用していたことが分かった。

この事件が報じられた後、メタの広報担当者のアンディ・ストーンはツイッターに掲載した声明で、「6月初旬に地元の警察から受け取った捜査令状は、中絶に言及していなかった」と主張した。警察はその当時、死産された赤ん坊が焼いて埋められた事件を捜査していたという。

FBが「中絶反対派を支援」という疑惑


セレステが起訴される1カ月前、メタ社のマーク・ザッカーバーグCEOは、中絶を求める人々をどのように保護するのかと従業員から質問された。ザッカーバーグは、プラットフォーム全体に暗号化を拡大する取り組みが「人々の安全を守る」と答えたと、CyberScoopは報じている。

The Vergeによると、5月にメタの人事担当バイスプレジデントのJanelle Galeは、従業員に対し、職場で中絶について議論することは許されないと伝えたという。その後、同社は、中絶を受けるために別の州に行かなければならない従業員の中絶費用を負担すると発表した。

メタは、中絶関連のコンテンツをどのように扱うかについて、ほとんど沈黙を守ったままだ。しかし、最近になって「ミフェプリストン」などの中絶薬の入手に関す投稿が、組織的に削除されていることに一部のユーザーが気づいている。それと同時に、メタが危険な誤情報を含む中絶反対派の広告から収入を得ていることが、Media Mattersの調べで判明した。フェイスブックが中絶サービスサイトと交流するユーザーのデータを収集し、その情報を中絶反対派に提供していたことも報じられた。

それとは対照的に、グーグルは、社員からの圧力を受けて中絶関連のサービスを検索したユーザーの位置情報を削除すると発表した。

米国の大手テック企業は、中絶を求める女性を罰しようとする捜査に協力するかどうか、またどの程度まで協力するかの判断を迫られている。6月にメタの広報担当のストーンはワシントン・ポストの取材に、「ユーザー情報に対する政府の要請はすべて慎重に精査しており、拒否する場合も多い」と語っていた。

この事件を担当する地方検事は、コメントを拒否した。セレステの事件を担当する弁護士からも、現時点でコメントが得られていない。

編集=上田裕資

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