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2022.08.19 10:00

アイドル経験が原動力に。エンタメ再開を渋谷から推進

コロナ禍で大きな打撃を受けたエンタテインメント業界。東京都渋谷区は2022年1月、区内のライブハウスなどに対して、換気対策用設備の導入や改修工事にかかる費用を30万円まで補助する制度を導入した。その推進役を果たしたのが、渋谷区議会議員の橋本侑樹(29)。東京大学出身で元アイドルという異色の経歴を持つ。

「ライブハウスは、渋谷のカルチャーをかたちづくっている大切なファクターのひとつ。エンタメ業界に恩を感じている私が率先して、感染症に強いライブハウスづくりの指針を示さなくてはいけないという使命感がありました」

東大在学中から、科学的根拠を示して伝えることの重要性を学んできた。指針を示すうえで重視したのも、実験に基づくデータだ。電通大や東大、日本音楽会場協会、空調設備業者等と連携し、21年4月と6月にライブハウスで換気対策の実証実験を実施。空気中のウイルスによる「マイクロ飛沫感染」を防ぐためにダクトを活用した換気工事やドアを開けた換気を行うことが手軽で有効だという結果をデータで示し、補助金制度の導入を推進した。

「私のような(若い女性議員の)場合、個人の思いをベースにした政策提言は通用しない。エビデンスは私の経験不足をカバーしてくれる」

学生時代からLGBTQの友人がおり、「社会をもっと居心地のいい場所にしたいと思っていた」。15年には渋谷区が同性パートナーシップを認める条例を施行したのを目の当たりにし、「社会は変わるし、もっとよくなると実感した」という。

25歳の夏に議員になると決意し、19年4月の区議会議員選挙で初当選。渋谷区の最年少議員として、女性の健康問題の解決や、多様性のある社会づくりに奔走する。

「アイドル時代、ライブに来てくれた人に『明日も頑張れる』と言われるのがいちばんうれしかった。どういう制度や支援があればみんなが明日も頑張ろうと思えるのかいつも考えています。渋谷の街から日本を変える新たな一石を投じていきたい」


はしもと・ゆき◎1992年生まれ。三重県出身。東京大学文学部卒。高校3年時に東京・秋葉原を中心に活動するアイドルユニット「仮面女子」に加入し、大学を卒業した後もライブ活動を継続する傍ら、東大出身アイドルとして報道番組や討論番組などに出演。19年の渋谷区議会議員選挙で「あたらしい党」から出馬し初当選。現在1期目。

文=瀬戸久美子 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.095 2022年月7号(2022/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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