住民に重くのしかかる「パラダイス・タックス」
パラダイス・タックス、直訳すると「楽園税」。しかしハワイ州政府がそんな税を定めているわけではなく、このような税金は存在しない。
ご存知の通り、ハワイは太平洋のほぼ真ん中に位置する島々からなる州だ。アメリカ本土までは、一番近いカリフォルニア州でも4000km以上離れている。そして、ハワイでの生活に必要となる食料品、生活用品、家電などのほとんどが、アメリカ本土から送られてくる。そのため、すべてのものに輸送費が加算され、あらゆるものの値段がアメリカ本土より高くなるのだ。
実際、ミズーリ経済研究情報センター(MERIC)が全米各州の生活費を指数としてまとめた「生活費インデックス」によると、2022年第1四半期の数値でハワイ州は全米で最も生活費が高い州となっている。全米平均を100とした場合、ハワイのスコアは192.7。つまり、ハワイでの生活には全米平均の2倍近くのコストがかかることになる。
多くの人が憧れるハワイで暮らすためには、それだけの経済的負担を負わなければならない。現地の人々は、そんな生活費の高さを“架空の税”に例え、「ハワイにはパラダイス・タックスがあるからね」と嘆くのだ。
しかし、実際のパラダイス・タックスこそないが、ハワイの州税は全米の中で高いことで知られている。アメリカで暮らす人々は、所得に対して、国税にあたる「連邦税」と、自分が暮らしている州ごとで課せられる「州税」の2つの納税義務がある。州税は州ごとに税率がまったく異なり、2021年のデータで州税が最も高いのはカリフォルニア州で13.3%(所得が100万ドル以上の場合の最高税率)。そしてそれに次ぐのが、ハワイ州の11%だ(同条件)。
一方、ワシントン州、テキサス州、フロリダ州など、一切所得税を課さない州は7つある。それらを考えれば、ハワイの税金もアメリカの中で高い部類に入ることがわかるだろう。
住居費は全米平均の3倍以上
ハワイの高い生活費のなかで突出しているのが住居費だ。先述の「生活費インデックス」の内訳をみると、ハワイの住居費のスコアは、全米平均100に対して320.7。家賃が高いことで知られるニューヨークのスコアは237.6だから、それよりもさらに高く、全米平均の3倍以上になる。
これはコロナ禍におけるハワイの不動産取引価格を見ても明らかだ。パンデミック初期には、多くの地域と同様にハワイの不動産マーケットも大きな影響を受けて、取引件数が減少した。