アカデミー・オブ・マネジメントが刊行する学術誌に掲載された論文によると、組織内で権力者の立場にある男性は、声をあげ道徳的逸脱を指摘した場合に報復を受けにくかった。しかし、こうした「権力者の特権」は、女性にはあてはまらない。告発者が女性である場合、組織内の地位にかかわらず報復に直面したのだ。
研究チームは実験のなかで、協力者たちに対して、グループチャットを通じてチームプロジェクトを完成させるよう指示した。プロジェクトの進行中、研究チームは、男性名の「ケビン」または女性名の「ケイト」という参加者を装って、グループが進めているタスクに対して、道徳的見地から反対意見を述べた。
研究の筆頭著者である、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のティム・クンドロ(Tim Kundro)教授によれば、反対意見は、必ずしも「違法だ」あるいは「非倫理的だ」といった強いものではなく、「道徳的グレーゾーンにある」といったものが主だった。
架空の女性参加者ケイトによる反対意見(文章表現はケビンの場合とまったく同じだった)は、ケイトが組織内で権力者の立場にあると知らされていた場合でさえ、報復にさらされた。一方ケビンは、権力者である場合、反対意見を述べても報復にさらされなかった。
「あなたは、まるで駄々をこねる子どもだ。もっと大人になり、現実的になるべきだ」。これは実験中、ある協力者が、ケイトの懸念に対して書き込んだ反応だ。女性のほうがより報復にさらされるのは、道徳的見地から懸念を表明することが、ジェンダー・ステレオタイプから逸脱する行為であるからだと、研究チームは考えている。
内部告発者自身は、全体の利益のために行動しているつもりでも、周囲の人々からは、自己利益を優先していると認識されがちだ。そして女性は、自己利益を最優先に行動することを期待されていない。そのため女性は、周囲の期待から逸脱した行動をとった場合に、職場で反発や報復にさらされやすいのだ。