反対意見の位置づけを変えることで、報復のリスクを抑えられる
クンドロは、女性に対して、他からの報復を避けるために行動を変えるという責任を負わせるべきではないと述べる。「偏見を取り除き、この問題を体系的に解決する責任は組織にある」と、彼は言う。
一方で、この研究からは、反対意見の表現を少し変えるだけで、「報復のリスク」を下げられることも明らかになった。道徳的見地からの懸念を、組織の利益に照らしたものと位置づけた場合、告発者の性別を問わず、報復が減少したのだ。
反対意見の表現に変化を加えた実験条件では、ケイトまたはケビンは、自分自身ではなく、組織について心配していることを強調して発言した。具体的には、問題のある行動を続けた場合、企業そのものにネガティブな結果が返ってくるかもしれない、といった形で懸念を表明したのだ。研究チームはさらに、「会社の評判に傷がつくことになるかもしれない」、「組織とそのメンバーにとっての問題に発展しかねない」といった言い回しを盛り込んだ。
論文著者のひとりである、ペンシルベニア大学のナンシー・ロスバード(Nancy Rothbard)教授は、プレスリリースで次のように述べている。「重要なのは、道徳的見地からの反対意見を述べる際に、自己利益のためではなく、向社会的な(prosocial behavior)意図からの発言、つまり組織のためを思っての発言であることを明確にすることだ」
専門家は女性たちに、交渉の際には、攻撃的で自己利益優先とみられかねない言動を控える戦略をとることを推奨する。ヒラリー・クリントンの選挙対策チームは大統領選において、同氏の野心を「人々に仕えたいという思い」と言い換えることで、自己中心的とみなされるのを避けた。
もちろん、こんなライフハックを使わなくても、女性が職場でうまくやっていけるのが理想だ。しかし、時代遅れのステレオタイプであっても、それに従って行動すべきだ、という女性に対する期待が存在するかぎり、メッセージを言い換える方法を知っておくことは、発言の効力を失わせることなく報復から身を守るのに有効だ。