AIで航空機の「自動操縦」目指す米Merlin Labsが140億円調達

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競合企業の動き


航空機の自動航行化に取り組んでいるスタートアップは、Merlin Labsだけではない。競合企業としては、都市部のエアタクシー・ネットワークを立ち上げるという当初の目標から一転して、短期的にはパイロットの訓練時間を短縮するために飛行制御の簡素化に注力するSkyryse社や、独自の航空貨物輸送機を構築しているXwing社、空軍の開発契約も獲得しているReliable Robotics社などが挙げられる。

XwingとReliableは、パイロットをコックピットから外し、地上の遠隔安全モニターが機体を監視し、航空管制との通信を処理するシステムを開発しようしている。これはコスト削減を約束するもので、地上にいる一人のパイロットが最終的に複数の航空機を監督することを可能にする。

しかし、Merlin Labsのジョージは、FAAが航空機と地上管制官との通信回線に障害が発生するリスクを警戒しており、安全パイロットを登場させる彼らのシステムのほうが有利だと考えている。

ミシガン大学の自律航空宇宙システム研究所のエラ・アトキンス所長は、危険の検知と回避を人間のパイロットに依存するというMerlin Labsの戦略が、短期的には規制当局の懸念に対処する上で「悪くない」と話す。しかし、同社が「手始めの段階」から完全な自律性に移行できるかどうかは分からないと話した。

また、航空管制官と対話するための自然言語処理のAIシステムの開発は、FAAがデータリンクベースの方式に移行する準備がまだ整っていない今なら意味があるかもしれないが、今後数十年の間に押し寄せる自動化の波の中で、埋没してしまう可能性もあると警告した。

Merlin Labsは、今回の調達資金で今後1年間で50〜60人の社員を増員し、120〜130人の規模にする予定という。「私たちは、新たな資金が当社のイノベーションに大きな力を与えることを期待している」と、ジョージは語った。

編集=上田裕資

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