テクノロジー

2022.08.12 08:30

クリーンで静かな「マイクロモビリティ」の普及に必要なこと


現状では徒歩と公共交通機関という環境に最も優しい2つの移動手段の代わりによく利用されているケースが多く、自家用車の代替手段として十分活用されているとはいえないのです。

電気を動力源とするマイクロモビリティでは、材料調達から製造、廃棄までのライフサイクルの全段階で排出ガスが発生します。また、その利用規模が拡大されていくと、従来とは異なる問題が生じ、従来とは異なる交通渋滞を招くおそれがあります。

これに対して、公共交通機関の車両では、ライフサイクルの一部の段階でしか排出ガスが発生しません。しかも、その影響は製品寿命の長さと規模の効率性の高さのおかげで大部分が相殺されます。つまり、利用者が増えるほどより環境にやさしい車両になるのです。

マイクロモビリティを公共交通システムの一部に


結局のところ、交通渋滞の緩和と排出ガスの低減に最も効果的なのは、マイクロモビリティを他の公共交通機関と組み合わせる「インターモーダル」な戦略です。

1枚の乗車券で電車や地下鉄から電動キックボードまで利用できるシステムも、ファーストマイルとラストマイルという交通アクセス問題の解消につながります。さらに、予約のほかルートや利用可能状況のリアルタイム検索などが可能なデジタルプラットフォームも導入すれば、先述の調査で明らかになった、マイクロモビリティでの通勤を考えている人の割合が5人に1人という現状を改善できる可能性があります。

大部分の人にとって交通手段を選ぶ決め手となるのは、最終的には料金です。

BCGとザンクトガレン大学は先述の調査の一環として、マイクロモビリティと他の公共交通機関を組み合わせた場合、どのくらいの料金であれば利用者に受け入れられるかを把握するために、2つの組み合わせオプションを提示してアンケート調査を実施しました。2つのオプションはそれぞれ異なる組み合わせ内容ですが、どちらもそれぞれの交通手段を別々に利用するよりも安くなるように料金を設定されています。

オプションのひとつは公共交通機関の1回券で、マイクロモビリティ10分間利用も含まれるもの。このオプションについては、現在の公共交通機関の運賃より25%高くても利用者に受け入れられると多くの回答者が考えていることが明らかになりました。

もうひとつのオプションは公共交通機関の一カ月券で、複数の異なるマイクロモビリティも利用できるものです。このオプションについては、現在の公共交通機関の運賃より22%高くても利用者に受け入れられると多くの回答者が考えていることがわかりました。
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文=Nikolaus Lang Andreas Herrmann

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