世界鉄鋼協会のデータによると、世界第2の経済大国である中国における2022年上半期の鉄鋼生産量は、前年同期比で6.5%減になった。
これは、世界最大の鉄鋼生産国として他国を大きく引き離している中国にとっては、特に悪い状況だ。
通常、中国の鉄鋼生産量は年間で10億トン超に達する。これらの鉄鋼は、製品の製造や建物の建築に使用される。2022年に入って生産量が落ち込んでいることが中国にとって大きな懸念になっているのは、それが理由だ。
中国は、21世紀に入って以来、世界の主要な製造拠点の一つとなっている。今の問題は、中国の鉄鋼生産量の落ち込みが、同国の製造業が苦境にあることを示しているのかどうか、という点だ。おそらくは、そうした状況にあるのだろう(中国政府が発表する経済統計は、弱含みの傾向をそれほど示さないだろうが)。
中国の鉄鋼生産の状況を検証するには、もう一つ、ロシアと比較する方法がある。ロシアの鉄鋼生産量は、2022年上半期に7.2%減少した。これは予想されていた事態だ。ロシア経済は、西側からの厳しい制裁措置によって大きな打撃を受けている。また、ウクライナでの戦争に多大なリソースを投入しているという事情もある。これらの状況を考えると、ロシアの鉄鋼生産量が大幅減になることは、予想の範囲内と言えるだろう。
では、中国の場合は何が要因になっているのだろうか。大きな理由の一つとして考えられるのは、2022年に入り、上海をはじめとする主要な生産拠点で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴って実施されたロックダウンだ。しかしこれだけでは、今の状況のすべては説明できないだろう。
考えられるのは、アフターコロナの状況を踏まえ、西側諸国の企業が、生産拠点を中国からベトナムやメキシコ、北アフリカへと移す動きが起きている可能性だ。
それが正しいとすれば、中国経済は今後も弱含みの状況が続くと考えられる。