デジタル経由の顧客が増えたことで、マクドナルドにとっては、それぞれの顧客のニーズに即した提案を行うチャンスが増える。これには、顧客に合った割引サービスの提供も含まれる。
ケンプチンスキーCEOは、「割引サービス」は、もはや画一的なものではなくなっていると指摘した。デジタルの普及によって、顧客の利用実態について、さらなる情報が得られるようになったからだ。
ケンプチンスキーCEOは、こう説明している。「(デジタル化によって)得られたチャンスについて説明すると、ドイツ、フランス、英国、中国では、すでにデジタル経由の売上が、全体の半数を超えている。特に中国では80%以上に達している。一方、米国では、売上の4分の1ほどだろう。つまり、売上に占める割合という意味では、デジタルを増やす余地は大いにあるわけだ」
「デジタル経由の売上が増えれば、個人を特定できる顧客の割合が大幅に上昇する。すると、サービスや価格に関する提案についても、幅広い可能性が開けてくる。当社は、デジタル化にメリットを見いだしつつある。あとは、さらに徹底的に、迅速に進めるだけだ」
これは、オザンCFOが言うところの、ブランドの価値の「進化」に寄与している。マクドナルドは従来、米国全土で一律の割引メニューを提供していた。だが今では、メニューの価格設定は、基本的に地域レベルで決定されている。こうした地域重視のアプローチでは、個々の現地オフィスの判断により、それぞれの市場のニーズに合い、自らの強みを生かせるメニューを販売促進対象としていると、オザンCFOは説明した。
個人に即した割引サービスに転換することで、企業側には、「定価で購入するつもりの顧客」に割引情報を送ってしまうことを避けられるというメリットがある。
「10年ほど前を振り返ると、我々には、個人に即した精密なやり方での価値の提供を行う能力がなかったため、全米のすべての顧客に割引価格を提供する羽目になっていた。そうしたやり方では無駄が多い」とケンプチンスキーCEOは述べる。
マクドナルドは、2008年のリーマン・ショック後の不況の時期に、顧客がフルサービスのレストランからのトレードダウン行動を見せるなかで、お得感によって勝ち組企業となった。今回は、食料品の価格上昇という要素が加わっている上に、「個人に即した緻密な割引サービス提供」へ移行したことから、同社は再び「実質的な勝ち組」になると考えられる。