その新たな定義が示すのは、エスティローダーが買収の実現後、高級ブランド世界最大手の仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンやケリングと同じような位置づけ、成長、そして地位の獲得を目指しているということかもしれない。
美容とウェルネスはここ数年、その関連性をますます密接なものにしてきた。消費者が自身をどのように捉えるか、そして自分の外見をどのように考えるかは、それぞれの精神面の状態を表すものでもあり、精神的に健全な状態を維持することこそが、ウェルネスだ。
トム・フォードを傘下に収めることになれば、エスティローダーはウェルネスの分野以上に、ラグジュアリーの分野により重点を置くことになるとも考えられる。同社が今後、ウェルネス分野での買収を検討しないということではない。だが、エスティローダーの次の狙いが、純粋なラグジュアリー・ブランドだったということは、驚きだといえる。
買収が実現する保証はない。トム・フォードを傘下に入れたいという別の企業が現れる可能性もある。ただ、エスティローダーとトム・フォードが合併に向けて協議中であるとの情報が正しければ、ビューティービジネスに携わる企業の今後の進化について、新たな解釈の仕方が生まれことになるだろう。