法案は米国の半導体産業の競争力を高め、中国や台湾など中華圏(グレーターチャイナ)への半導体依存や世界的な半導体不足の緩和をめざすもの。ヤフーニュースによると、予算額はまだ計算中だが向こう10年で約790億ドル(約10兆7000億円)にのぼるとみられている。うち500億ドルは米国の半導体メーカーによる設備拡大や研究開発に直接充てられる方向だ。
半導体生産は現在、中華圏が優位にあり、世界全体の輸出額の半分を占める。国連の統計によると、完全なデータが入手できる最新の年である2020年の中華圏の半導体輸出額は4000億ドル近くに達する。内訳は香港が1539億ドル、台湾が1231億ドル、中国本土が1170億ドルだ。
これに対して、米国の輸出額は442億ドルと世界7位にとどまる。上位はこのほかシンガポール(862億ドル)、韓国(829億ドル)、マレーシア(493億ドル)、日本(289億ドル)などとなっている。
1990年まで、米国は世界の半導体の4割近くを生産し、やはり4割ほどを欧州諸国が生産していた。その後、より安価に生産できる設備をもつアジア諸国が台頭。勢力図は急速に塗り替えられ、2000年には米欧のシェアが合わせて4割強に縮む一方、残りの大部分を日本と韓国、台湾が占めた。
中国本土は2010年までにすでにわずかなシェアを獲得していたが、2020年には約15%に広げた。さらに2030年には、米国や欧州、アジアの競合勢からシェアを奪うかたちで25%までシェアを拡大すると予想されている。
新型コロナ禍の間、サプライチェーン(供給網)の混乱によって半導体が不足したことから、一部の国は半導体の国内生産の強化に乗り出した。米国に先だって日本や欧州がそうした措置を打ち出している。
ただ、中国本土の半導体生産の成長スピードは速く、追いつくのは容易ではなさそうだ。