「料理の鉄人」が復活 国境と時代を越えて成功できたワケとは


アメリカ版に続き、現地版の制作はイギリス、カナダ、オーストラリア、インドネシア、ベトナム、タイでも続きました。タイ版は現在も放送中で、11シーズン目に突入しています。

タイでも商品化が実現し、現地のセブン-イレブンと提携した冷凍食品が販売されました。日本では「料理の鉄人」の商品展開は書籍に留まっていますが、海外ではブランド力が貪欲に活かされていることが伝わってきます。

2018年番組打ち切りからの新展開


これら「料理の鉄人」の海外における現地版制作、商品展開は、フジテレビの海外ビジネス収入として計上され続けています。

順風満帆に見えた「料理の鉄人」の海外展開でしたが、アメリカ版を放送していたフードネットワークが懐事情により番組の終了を決定したことで、フジテレビにとって稼ぎ頭のアメリカからの収入は2018年で一旦途絶えました。しかも、その時点での新たな展開は、まったくの白紙の状態だったのです。


出来上がった料理を審査するKristen Kish 「アイアン・シェフ: レジェンドへの道」(c)Netflix

「次はどうしようか。ここで新しい展開を生み出すことができなければ、『料理の鉄人』の海外展開の未来はもう厳しいと思いました」と、当時の心境を打ち明けてくれたのはフジテレビで番組の海外セールスを担当するグローバル事業部の小宮隆司氏です。

そのとき小宮氏は、アメリカから世界へと「料理の鉄人」をヒットさせた仕掛け人であり番組一筋というアメリカ版プロデューサーのエイタン・ケラー氏と相談しながら、新展開を探っていったといいます。

当時は韓国発の音楽番組が世界の流通市場を席捲し、料理番組は定番人気と言えども、劣勢でもありました。それでも諦めずに動き続けたのが功を奏したのか、「2019年の冬、Netflixが興味を示してくれた」と小宮氏は明かします。


「アイアン・シェフ: レジェンドへの道」(c)Netflix

「『アイアン・シェフ』として『料理の鉄人』がこれまで世界中に知れ渡り、それとともにフジテレビの社名も世界の番組流通市場で広まっていきました。最終的にNetflixと契約するに至ったのも、『アイアン・シェフ』のブランド名があったからこそ勝ち取ることができたと思っています」

このように語る小宮氏ですが、Netflixでの展開はグローバル版のみならず現地版の拡大が見込めることにも魅力があったと言います。実際にブラジル版が8月10日から配信されることが既に決定しており、メキシコ版も年内の配信が予定されています。
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文=長谷川朋子

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