そしてロシアだ。これまでのところロシアの生産と輸出は、西側の制裁や、2月24日のウクライナ侵攻以後ロシアへのオイルマネー流入を阻止しようとする(失敗した)取り組みに直面する中、驚くほどの回復力を見せている。
しかし、ロシアの石油が遮断されないという保証はない。国際エネルギー機関(IEA)は、今年後半にロシアの産油量減少は1日あたり約300万バレルに拡大する可能性があると考えている。
それは、最近EUが、一部の例外を除きロシア石油の輸入を年末までに減少することで合意したからだ。その困難な作業は今後数カ月のうちに始まり、代わりの市場を見つけるという大きな圧力をロシア政府に与えるだろう。
中国とインドはこれまで安いロシア石油を享受してきたが、中東産油国との長期供給契約を破りたくないので、ロシア石油を受け入れられる量にも限りがある。供給元の多様性、すなわち安全性は、これら巨大輸入国にとって常に最重要課題だ。
米国のシェールオイル生産は急激に成長しており、今年の不足を補う重要な追加供給源になるだろう。米国の2022年末の石油生産量は、年初より日量約100万バレル多い日量1280万バレル程度になる可能性がある。
これは劇的な増加である。しかし、米国戦略石油備蓄(SPR)による前例のない大量放出が今秋に終わる。これは、国際市場から毎日100万バレルを取り除くものであり、その結果バイデン政権に価格を抑える有効な方策は残されていない。
もう1つ忘れてならないのは、世界の製油能力の不足だ。世界では、2019年以来1日400万バレル相当の製油所が閉鎖されている。これはパンデミック関連の需要急減が原因であり、米国だけで1日100万バレル減少している。新たな石油生産能力に投資している地域は中東とアジアだけだ。それは今後も変わらない。たとえバイデン氏と欧州がクリーン燃料への迅速なエネルギー転換を強く求めていてもだ。
実際、石油産業全体における投資の減少は長年の課題だ。具体的には、上流の生産・精製プロジェクトへの投資がここ数年著しく減少した。これは、OPEC、非OPEC諸国の両方で、原油と精製燃料の生産能力が低下することを意味している。
このため、原油価格の主要リスクは依然として上向きに傾いていると信じないわけにはいかない。