退社するのは、フルフィルメント部門を統括するアリシア・ボーラー・デービス上級バイスプレジデント(VP)と運輸サービス担当のデーブ・ボーズマンVP。ボーラー・デービスは2019年にゼネラル・モーターズ(GM)から、ボーズマンは2017年にキャタピラーからアマゾンに移籍した。
アマゾンは2020年に米国でディレクターやVP級の黒人幹部を倍増させ、翌2021年にもさらに約7割増やそうとしていた。だが、カルチャーバンクス(編集注、筆者の経営するメディア会社)の報道によると、黒人幹部の確保にはかねて苦慮していたようだ。
アマゾンのアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は、アマゾンは過去2年、上級幹部の採用で「大きな進歩」を遂げたものの、最上位の黒人幹部2人を失うことになってしまったと電子メールに記している。
アマゾンのデータによると、同社の上級幹部で黒人の比率は2021年末時点でわずか5.5%。一方、時間給労働者を中心とする同社の米国内の従業員全体では、約7割を非白人が占めている。
アマゾンは、ばらばらだったようにみえる産業全体を劇的に変化させる能力があることを示してきた。それを踏まえれば、リーダーシップの多様性という課題を解決するのも難しいことではないはずだ。マッキンゼーやMSCIの研究によると、幹部層の多様性が高い企業ほど、財務成績が優れ、企業統治(コーポレートガバナンス)の不手際も少ない傾向にある。
アマゾンは経営幹部に多様性が欠けているという批判を浴びて、昨年、ゴールドマン・サックスの幹部だった黒人女性のエディス・クーパーを新たに取締役に迎えている。ただ、アマゾンの現在の取締役会では、スターバックスの幹部からウォルグリーンのCEOに転じたロズ・ブルーワーが退任したことで、黒人メンバーはクーパーひとりとなっている。