ウクライナ難民の大半が帰国を希望、UNHCR調査で明らかに

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国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が2022年7月13日に発表した最新リポートで、ウクライナ難民の大半は、いずれは帰国したいと考えながらも、戦闘が下火になるまで待つつもりであることが明らかになった。ロシアがウクライナに侵攻してから4カ月以上が過ぎたいまも、多数の人が混乱した状況に置かれていることが浮き彫りになったかたちだ。

2022年5月半ばから6月半ばにかけて、チェコ共和国、ハンガリー、モルドバ、ポーランド、ルーマニア、スロバキアに避難しているウクライナ難民およそ4900人を対象に聞き取り調査を行ったところ、できるだけ早く帰国したいと答えた人が大半を占めた。しかし約3分の2は、戦闘が終わるまで避難先にとどまるつもりのようだ。

聞き取り調査に応じたウクライナ難民のうち、近いうちに帰国するつもりだと回答した人は16%だった。そのうち、1カ月以内の帰国を予定している人は40%で、残り60%は、具体的な時期は決まっていないと答えた。

また、帰国予定者のうちの15%は、ウクライナでの滞在は一時的なものだとし、家族を訪ねたり、物資を調達したり、他の親戚の避難を助けたりすることが目的だと回答した。

ウクライナに帰国する予定だと回答した人の約4分の1は、生計を立てるため、あるいは、基本的なサービスを利用する必要があるためという理由を挙げたことが、UNHCRリポートで明らかになった。こうした点から、避難先で必要なサービスをなかなか受けられずにいる人が多いことがわかる。

リポートによれば、1カ月以内に避難先の国を変える予定だと回答した人は全体の9%だった。そのうちの3分の1が、移動したい国としてドイツを挙げ、チェコ共和国(7%)、カナダ(5%)が続いた。

多くの難民、とりわけ特別なニーズを持った人たちが、「避難先の国にそのままとどまるかどうかを左右する重要な要因」として挙げたのが、雇用の機会、滞在先の言語の学習、保育、教育、住宅などの支援だ。また、紛争を巡る状況が不透明なため、今後の計画が立てにくいと答えた人が多かった。

国連の推定では、ロシアによる侵攻を受けて、ウクライナから他の欧州諸国に避難した人は550万人にのぼる。UNHCRによれば、ウクライナ国内で住む家を追われた人は710万人を超え、1600万人近くが緊急人道支援を必要としている。国連の発表では、2月の侵攻以来、ウクライナ国外への越境記録はおよそ840万件に上っている一方、当局によれば、約310万人が帰国したという。

ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、欧州は、第2次世界大戦以来で最悪の難民危機に直面している。また、国外に避難できず悲惨な状況に置かれている人も無数にいる。国外へと避難した人の圧倒的多数は女性と子供だ。戦闘任務に就ける年齢の男性は、国外への避難が禁じられている。

データを見ると、ウクライナ難民の大半は当初、ポーランドやルーマニア、ハンガリー、モルドバ、スロバキアといった近隣諸国に避難した。しかし、欧州連合(EU)域内の国境移動は容易なため、人の流れは監視されていない。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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