ビジネス

2022.07.22

さまざまな社会インパクトの実現を目指す、新しいフィランソロピー実践者たち30人

孫 正義(Getty Images)

「インクルーシブ・キャピタリズム」への懸け橋となる「新しいフィランソロピー」。日本における実践者たちは、どのような思いで、どのような取り組みを行なっているのか。


「インクルーシブ・キャピタリズム」への懸け橋となる、「新しいフィランソロピー」。かねて「意志のあるお金」と言われているフィランソロピーはさまざまなカタチで進化している。

「教養としての『新しいフィランソロピー』入門」記事にあるように世界では、マイクロソフト創業者・ビル・ゲイツ、メタCEOのマーク・ザッカーバーグをはじめ、大胆に、そして、多様な、革新的な取り組みが行われている。

日本でも同様に、新しい動きが生まれている。日本の「新しいフィランソロピー」の動きについて、同領域に知見のある、特定非営利活動法人・日本ファンドレイジング協会の代表理事である鵜尾雅隆、一般財団法人・社会変革推進財団の藤田淑子、小柴優子、サムライイキュベート代表取締役の榊原健太郎、一般社団法人・新しい贈与論/SOLIOの桂大介ほか、編集部の取材を通して候補を募り、編集部からの候補を加えたリストから30人を選出した。

池森賢二


池森ベンチャーサポート 代表

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社会起業家に超長期の資金提供

化粧品大手ファンケル創業者。2018年に私財のみで設立した「池森ベンチャーサポート」にて、IPOを目指すような急な成長曲線をたどらない、しかしながら社会に必要な“社会課題解決にチャレンジする会社”に、超長期の資金提供を行っている。現在の投資先は株式投資型クラファンサービス「FUNDINNO」、探究型EdTech教材「Inspire High」など。

また、早くに父親を亡くし、学校に通うことや教科書を手に入れることさえ難しかった自身の経験から、高校進学を支援するための池森奨学財団を16年に創設。多くの学生が高校進学の夢をかなえた。

笠原健治


ミクシィ 取締役ファウンダー

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NPO支援「みてね基金」

2020年4月、ミクシィが提供する家族向け写真・動画共有アプリ「家族アルバム みてね」の社会貢献プロジェクトとして、子どもやその家族を取り巻く社会課題の解決を目的とした「みてね基金」を設立。個人資産から10億円を提供し原資とし、子どもやその家族の緊急度の高い課題に向き合い活動を行ってきたNPO53団体に合計約3億円の助成を行った。

笠原氏はこれ以前から継続的に寄付活動を続けており、ミクシィを通じた平成30年7月豪雨、平成30年北海道胆振東部地震への義援金、東京大学基金への寄付のほか、個人でも多額の寄付を行っている。

川野紘子


川野小児医学奨学財団 事務局長

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新世代・インパクト志向の好事例

理事長・川野幸夫(現・ヤオコー取締役会長)が1989年に設立した公益財団法人川野小児医学奨学財団。小児医学・医療・保健の発展のため、研究助成、奨学金給付、小児医学川野賞、ドクターによる出前セミナー事業などを行う。娘・川野紘子は事務局長として、戦略立案、実務運営に携わり、時代に合わせて活動の内容を改善している。

人材育成・輩出に関する新たな取り組みも開始するなど、新世代が自分の視点で、ファミリーのフィランソロピー活動における哲学を守りながら、かつ、アップデートしながら社会貢献する好事例だ。

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小児科医になりたいという志をもちながら経済的な理由で進学を諦めてしまう学生に対して行っている「奨学金給付」。来年度から経済的支援に加え、視野を広げるためやコミュニケーションスキル向上のためのプログラム提供も

井上高志


LIFULL 代表取締役社長

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周囲を巻き込み社会貢献事業をムーブメントに

「人類の幸福」「世界平和」という壮大な目標に対して、「心×社会システム×テクノロジー」のかけ算で挑んでいる。目標に対しては、営利事業、社会貢献事業と双方のアプローチを行なっている。

イノベーションを社会実装する国内最大規模のリビングラボ「ナスコンバレー協議会」の設立、日本が進むべき未来ビジョンを提示する「Next WisdomFoundation」の設立、新経済連盟の理事、Well-being forPlanet Earthの評議員など、合計7団体で代表理事、理事を務めるなど、周囲を巻き込んでムーブメントをつくることで多彩な社会貢献を行っている。
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文=フォーブスジャパン編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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