ビジネス

2022.07.16 11:00

破産申請の衝撃、SPACのダークサイドが浮き彫りに


これは厳しい要求だった。

カリフォルニア州パロアルトを拠点とするエンジョイのビジネスは、AT&T、ブリティッシュ・テレコム、ロジャーズ・コミュニケーションズ(Rogers Communications)、アップルに代わって携帯電話を提供し、エンジョイの代理店に、より高い製品やサービスを追加で販売させるというものだった。このモデルは決して利益を生むものではなかった。2021年末までには、粗利益率はマイナス34.5%の赤字で、1億5800万ドルの損失を出していた。

それでも、エンジョイは2021年10月、マーキー・レイン・アクイジション(Marquee Raine Acquisition Corp.)とのSPAC合併により、2億5000万ドルを調達することに成功した。この取引により、金欠のエンジョイは、12億ドルと評価された。そして9カ月後、同社は破産申請をすることになった。

悲しいなか、他の多くのSPACも、同じような道を辿っている。ブルームバーグは2022年6月、これらの企業のうち65社が、単に会社を存続させ続けるために、2023年中にさらなる資金調達が必要になると指摘した。

2021年にSPAC上場を行った613社のうち、78社は現在、1株当たり2ドル以下で取引されている。このうち25社は、ナスダック証券取引所への上場を維持するための基準である1ドル未満で取引されている。

SPACのパフォーマンスに連動する上場投資信託(ETF)「コラボレイティブ・インベストメント・シリーズ・トラスト(Collaborative Investment Series Trust:DSPC)」は、年初来で67.7%、過去12カ月で78%下落している。

バリュエーション・バブルは崩壊したのだ。

ウォール街の投資ディーラーやテレビの解説者は、投資家の損失をSECのせいにしているが、それは、犯罪を警官のせいにしているようなものだ。それよりも、お金の実際の流れを見るほうが賢明だ。SPAC上場の多くは、決して上場企業になってはならないものだった。ウォール街の金融業者や貪欲な経営幹部たちが、抜け道を利用して、不用心な投資家たちにこれらの株を押し付けた。金融関連の新聞は、SPAC株が急騰していると煽って、SPACに生命を吹き込んだ。

投資家にとって、エンジョイ・テクノロジーの物語は、厳しくも極めて重要な教訓だ。とりわけ、利益の出ていないビジネスにおいては、バリュエーションは重要だ。多くのSPACは、二度と戻ってはこない。

翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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