習近平の解決策はいずれ中国で大きな問題をもたらす

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米国にとって習近平主席の野望が問題だとすれば、中国にとってはもっと大きな問題だ。新型コロナに対する勝利宣言を熱望する習首席の政策であるロックダウンや隔離に加えて、同氏による共産主義中央集権と計画主義の強化は、中国の経済的奇跡を弱体化し、さらなる成長の可能性に深刻な打撃を与える恐れがある。

新型コロナウイルスおよび中国政府が強いている厳しいロックダウンと隔離は、中国経済にとって最も差し迫った脅威だ。政府の厳しい締めつけは、ウイルス制圧の失敗につながるだけでなく、著しい経済的損害を与えていながら、経済にずっとやさしい西側の政策と比べて効果はほとんど変わらない。

新型コロナ政策は、中国国民に恐怖の種を蒔くことで必要以上に経済を停滞させている。政府はオミクロン株の毒性が弱いことや欧米がより緩やかな方法で効果的に対応している事実を隠してきた。さらに中国政府は、権威を維持するために、海外製のワクチンや医薬品の有効性を中国国民に対して否定しなければならないと信じているようでもある。

一連の厳格な行動が、中国は他の国々よりも効果的にウイルスに対応してきた、と主張してきた過去の政府プロパガンダに根ざしていることは間違いない。中国政府にとって、西側には何か効果的なものがあり、経済が回復しつつあると認めることは、重要な国内プロパガンダ神話の土台を壊すことになる。

上海、香港などの中心地を都市封鎖することによる経済損失はまだ計算不能かもしれないが、膨大であることはまぎれもない。李克強首相は最近広く流布された演説で、都市封鎖だけで、すでに引き下げられている2022年の中国の実質成長率目標である5.5%の達成が阻まれる可能性があることを明言した。すでに失業率は昨年末の4.9%から今春6.1%に上昇している。消費者信頼感指数は昨年の128から最新データの114へと落ち込んだ。わずか3年前に二桁成長していた住宅販売も2022年に完全に停滞した。輸出は数ヶ月にわたる減少の後、中国製造業を上昇させたが、この上昇は中国よりも海外の回復を反映している。

最終的により破壊的なのは、習首席の経済運営における共産主義的原理の主張強化だ。同氏の「新しい開発構想(NDC)」には、いくつかの要素があるが、基本的には、アジアソサエティ政策研究所所長のケビン・ラッド氏がいみじくも名づけたように、中国の「国家の方向転換」を構成する。これは、毛沢東以来初めて、中国の経済運営を厳しく管理された産業政策に合わせて再構築し、生まれ変わった国営部門を通じて、政府が国のすべての経済努力を一元的に指揮するものだ。

この方針の下、すでに中国政府は本来急成長していたはずのいくつかの消費者向けサービスへの出資を拒否した。これらの会社は経済的必要性を明らかに満たしていたにもかかわらず、立案者らの好みから外れていた。習首席はその「転換」の一環として、これらの企業のリーダーおよび政府の認定する経済目標から外れるビジネスリーダー全員を激しく批判した。同氏は、企業の所有者が誰であろうと、これらの人々は「国とのパートナーシップ」の下、政府の立案者、ひいては中国共産党の指示に従って生きていることを明確にした。
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翻訳=高橋信夫

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