習近平の解決策はいずれ中国で大きな問題をもたらす

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習首席のNDCは、同氏が「双循環」と呼ぶモデルも強調している。中国はこのモデルの下、輸出依存から脱皮し、国内の成長源への依存度を高める。さらに同氏は、中国のビジネスエリートの収入を人民に再分配する「共同富裕」という概念も強調した。NDCのこの部分には人道的言語が網羅されているが、同構想が中産階級や労働階級の利益を目的としている可能性は低く、中国共産党外のビジネスパワーの弱体化が主目的である可能性が強い。

1970年代後半に鄧小平氏が経済を開放して以来、中国が驚くべき成功を収めてきたことを踏まえると、この権威主義 / 共産主義的な方向転換は驚きといえる。しかし、さまざまな方法で、中国政府はこれを宣伝してきた。

鄧氏から習首席まで、中国の指導者は常に「自由化」は共産主義の究極の思想的目標のための手段に過ぎないと説明してきた。鄧氏は当初から「中国の特色ある社会主義」はこれに基づいてのみ定義されることを明確にしていた。西側では、そんなほのめかしは、異なる未来が見える指導者たちの古い理想に対する皮肉なレトリックであり、西側の指導者たちが、票のために、自分たちがすでに信じていない伝統的規範に対して大げさに敬意を示すのと同じだと見られている。しかし、その解釈は、西側が中国について信じたいことを信じている、という以上に現実と合っていない。

今や中国政府は、真の共産主義信奉者よりも、皮肉屋の方が多いように思える。つまるところ習首席が、市場がもたらした「圧倒的な量の物質的な富」が社会主義への道の次の段階に中国を位置づけたと述べてNDCを説明したのはごく最近のことだ。

もし習首席が本当にこの次の段階へ進みたいのなら、中国の成長と発展は困難な状態にある。たとえば、同氏のNDCはそれ自身と矛盾している。中国が、彼の立案者らが強調する産業である半導体、人工知能、量子コンピュータ、先端製造技術などで繁栄する唯一の道は、これらの分野で世界を支配することであり、それは中国の輸出依存を減らすという彼のもう1つの計画を阻止することになる。

もっと基本的なところでは、硬直した計画は中国経済のダイナミズムを損なう。開かれた市場が発展を加速する理由の1つは、分散化という特性が未来を先取りする取り組みに多様性をもたらすことだ。未来は誰も見ることができないので、多様性はどんな計画よりも経済ニーズにヒットする可能性が高い。計画とは、NDCがそうであるように、本質的に数少ない分野に集中するものだからだ。

NDCは幸運をつかむかもしれない。半導体、人工知能、量子コンピュータの分野には世界制覇の未来があるかもしれない。それらは現在間違いなく注目の分野だ。しかし時間とともに、確率は計画とは逆方向に傾き、テクノロジーの世界では特にそうだ。

立案者が間違いを犯すと、そして実際に犯すものなのだが、膨大な国家的努力が間違った方向に進む。それは基本的に分散化された市場では起こり得ないないことだ。いずれ共産主義的中央集権は、資源を無駄遣いするだけでなく、創造性と実験を抑制し、中国から過去10年間のダイナミズムを奪うだろう。そして経済は、新型コロナのロックダウンが悪い思い出になるずっと後に停滞するだろう。

翻訳=高橋信夫

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