高級「生」食パン専門店、乃が美。その食パンは、ふわふわで口に含んだ瞬間にとろけていくような生地でありながら、しっとりとした弾力も兼ね備え、芳醇な小麦のうま味や香りとともにミルキーな甘味が立ち上がってくるという逸品だ。まずはそのまま食べたくなる。味わうべくは、ノートッピ ング・ノートーストで「生」のままでも断然おいしいという感動だ。
日本の食文化に革命を起こした企業
「誰もが学校給食で食べた記憶があり、大人になってからも自宅や旅先で食べてきた食パン。この国民的なステイプルフード ( 主食 ) のイノベーターとして2013年に創業したのが、乃が美です。『高級「生」食パン』というワードは、私どもの登録商標になります。耳まで軟らかくておいしいという驚きをお届けし、いわゆる高級食パンのパイオニアとして歩んできました」そう語るのは、取締役営業本部長の小林祐人だ。大阪の1号店に始まり、現在では全国に255店舗を展開する乃が美。その全店舗で4月27日から販売された『 復刻「生」食パン』は、発売から約1カ月で販売本数100万本のヒットを記録した。
「ここで言う『復刻』とは、創業期にこだわり抜いて生み出した素材配合の黄金比率をよみがえらせたという意味です。そこに創業から9年を経て進化してきた製法や品質管理の知見をかけ合わせて、創業期 を超えるおいしさを実現しました」 店舗運営部課長の福田圭市が、復刻品にして新しい商品の売れ行きが好調な理由を明かしてくれた。お客様からの高評価を受けて、『復刻「生」食パン』は 5月末までを予定していた販売期間を6月末まで延長したのだ。
「乃が美の歴史は、挑戦の歴史です。これまでに小麦粉など原材料の配合比率や発酵、製法の調整を絶え間なく繰り返し、 高品質でおいしい食パンをつくるための挑戦を積み重ねてきました。高級食パンというジャンルの開拓者として、今後もさらなるチャレンジを続けていきます」
食パンという定数(普遍性)に独自の 変数(革新性)を盛り込むことで、常に日本人に感動を与えてきたイノベーション企業。それが、乃が美ではないだろうか。
3月26日には、台湾の台北市中心部に海外第 1号店となる「統一時代百貨台北店」をオープンさせた。店舗の外観には『高級「生」食パン専門店』という日本語が掲げられただけでなく、その右上に「食べた人全てが笑顔になる」とのフレーズも日本語で添えられている。
「乃が美は、食パンという日本の主食に対して、『高級「生」食パン』という新たなカテゴリーを生み出し、マーケットを切り開いてきました。そのポテンシャルは海外にも及びます。パンは世界の主食です。そんな主食の新しいあり方を提唱し、世界中のマーケットで新たなカテゴリーを確立できる可能性が、そこにはあると考えています」
こう話すのは、2019年1月に乃が美に 出資して以来、さらなる成長に向けて伴走しているクレアシオン・キャピタルのヴァイスプレジデント・井上圭だ。
創業以来、「食パンなのに高級」「食パンなのに耳まで軟らかい「食パンなのに土産になる」といった具合に過去にはなかった革新性を盛り込むことで乃が美が創出してきた感動は、食卓を明るく照らす笑顔に帰結してきた。そして今春、ついに乃が美は「食パンなのに海外進出」という領域にまで到達した。食卓の意味があらためて見直されたコロナ禍において、乃が美が日本の食卓にもたらした笑顔の意義は計り知れない。
「乃が美の『高級「生」食パン』は、世界でも勝負できる魅力や革新性があり、日本の職人技術の粋が凝縮されたプロダクトです。そして、明治期に海外から入ってきたパン食文化が、現代の日本において独自の文化へと進化し、ついに海外への展開を果たすステージが訪れています」
日本人としては、この壮大なる物語を応援せずにはいられない。いま金額ベースでは、日本人の主食は米からパンに切り替わっているようだ。総務省統計局の家計調査によると、乃が美が創業した翌年の14年から21年まで8年連続で1世帯当たりのパンの支出額が米の支出額を上回っている。また、21年の食パンの家計消費支出は8, 071円だった。乃が美が創業する前年の12年は7,002円だったので、 15.2%も上昇している。この数値が意味するものは深い。
クレアシオン・キャピタル の理念は、「『日本の宝』への投資」だ。 日本の主食をブラッシュアップし、新たな食文化を創出する乃が美は、まさに日本の宝である。
トップメッセージ
さらに磨きをかけて世界一へ創業時に乃が美が掲げたミッションステートメントは 、「 歴史に残る日本一の食パン専門店」でした。これまで本当に多くのお客様においしいと言っていただくなかで、「高級食パンブームのけん引者」との評価も頂戴し、すでに歴史に名を残すことはできたと自負しています。
ですが、私たちの挑戦は、これからが本番だと考えています。私たちはブームが落ち着いた 現在を第2創業期ととらえて、「パンで暮らしを変えるのが、乃が美」というステートメントを新たに掲げているのです。7月1日には「黒山 乃が美」という新商品を販売します。創業時から乃が美の歴史を築いてきた商品は、食パン業界のタブーといわれていた「腰折れ寸前の軟らかさ」に挑戦したものでした。
新商品は 「焼きすぎ寸前の香ばしさ」に挑戦したものとなります。今後は、この2枚看板で勝負します。 そして、高級食パンをトレンドとして語られるものではなく、カルチャーとして定着し、受け継がれ、進化していくものにしていきます。そのためには商品のおいしさそのものに常に改良を加えていくだけでなく 、全国 255店舗にいる2,000人以上の全プレイヤーの意識・発する言葉・実際の行動にも変革を起こしていかないとなりません。
いま、人材教育の施策においても、新たな取り組みを始めているところです。また、職人技術の意味と意義をさらに深掘りしていくと同時に、DXやGXが 叫ばれている時代においてあらゆる最新技術の導入にも積極的に取り組んでいきます。そのようにして絶え間なくブラッシュアップを続け、創業時に掲げた「日本一の食パン専門店」から「世界一の食パン専門店」へと成長を遂げていきます。コロナ禍を経ても世界中の日本の食文化に対する 興味・関心は変わりません。日本が誇る食文化である食パンを海外に広めていきます。
乃が美ホールディングス 代表取締役会長兼社長 森乃博之
投資ファンドの目線
これからの成長可能性に期待材料、製法、販売チャネル。これらの総合力が乃が美の強みで今後も伸ばしていける。例えば、販売チャネルで言うなら、総本店を含めて大阪府内に現在は28店舗を展開しているのに対し、東京都内は20店舗。人口比で考えると、まだまだ出店の余地があります。
一時期に比べ高級 食パン市場に落ち着きが見られるのは事実ですが、現在は高級食パンがカルチャーとして定着するステージに入ったと見ております。トレンドの落ち着きにより競合が減りつつある現状は、乃が美にとってはむしろ追い風ととらえているところです。世界進出も含めて、あらゆる戦略を動員しながら、IPOを目指してクレアシオン・キャピタルは伴走していきます。
クレアシオン・キャピタル 投資チーム マネージングディレクター 浅野靖成
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こばやし・ひろと◎乃が美ホールディングス取締役営業本部長。外食産業を経て、2019年10月乃が美ホールディングス入社。21年4月より経営企画室室長、22年4月より現職 。
ふくだ・けいいち◎乃が美ホールディングス 店舗運営部課長。 大学卒業後、アパレル企業に就職。販売員から店長、エリアマネジャーなどを経て、営業ブロックマネジャーを務める。 2019年11月に乃が美ホールディングス入社。
いのうえ・けい◎クレアシオン・キャピタル 投資チーム ヴァイスプレジデント。広告代理店やデジタルエージェンシー、コンサルティングファームで経営改革やマーケティング等のプロジェクトを経験し、2020年にクレアシオン・キャピタル参画。慶應義塾大学法学部卒
あさの・やすなり◎クレアシオン・キャピタルマネージングディレクター。有限責任監査法人トーマツにおいて、法定監査業務、株式上場準備支援業務、M&Aアドバイザリー業務に従事。その後、日系大手バイアウトファンドにおいて、プライベートエクイティ投資業務に従事し、2016年にクレアシオン・キャピタルに参画。一橋大学経済学部卒業。公認会計士。
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