裁判所の判決は「重要問題法理」に基づくものであり、本件で初めて適用された。この法理の要点は、EPAのような政府機関が議会で明確に規定されていない権限に頼って「経済・政治的に重要」な規制を新たに設定する裁量をほとんど与えないことにある。
重要問題法理は、連邦政府機関はそのような場合、自らの行動に関する議会承認を受けていなければならないと規定している。ウェストバージニア州EPAの例では、裁判所の決定はEPAの規則決定権限を大幅に制限している。
歴史上、議会は連邦規制機関を設立する際、意図的に幅広い文言を用いて、機関の権限を特定の規則、規制に限定しないようにしてきた。実際、規制機関は常に、進化する問題を抱えて変化し続ける社会的力学の中で、法を解釈し、その目的を実行し、規制を作ることを目的としてきた。
この場合、議会はEPAや米食品医薬品局(FDA)をはじめとする連邦政府機関の専門知識を信頼し、各機関が適切だと考える新たな規則や規制の施行を一任している。この理由の一部は立法者は、一般市民に影響を与える可能性がある問題の詳細を規制するための知識を、少なくとも十分には備えていないからだ。
ウェストバージニア州対EPAの裁判で、ケイガン最高裁判事は、判決に反対する少数意見で次のように述べた。「議会が幅広い権限を移譲している理由の1つは、規制機関が状況の変化に応じて規則や政策を適合できるためだ」と断定した。「そのような議会の選択を尊重するために、裁判所は当局がその方法を再考、再検討、修正するための十分な裁量を与えるべきだ」
裁判所によるこの決定は、他の機関、たとえばFDAにどんな影響をあたえるのか? 深刻かつ進行を続ける公衆衛生問題に対処するために、FDAは新たな規制を検討し施行しようとしているかもしれない。重要問題法理には厳密な定義も説明もないため、どの規制がこの法理の対象になるのか明確にはわからない。
それでも、もし新しい規制が既存の慣行と対立し、特定の利害関係者の利益に相反するなら、重要問題法理の範疇に入りうる。このため、それらの規制は訴訟の対象になりうる。ウェストバージニア州対EPA裁判が作った前例は、今後そのような規制に対する法的な異議申し立てに利用できる。ここで、新たな規制として、FDAが処方薬から市販薬(OTC医薬品)への切り替えを強制する可能性について、オピオイド拮抗薬であるナロキソンを例に考えてみよう。