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2022.07.04

ビル・ゲイツとダスティン・モスコヴィッツが語る、贈与の本質と効果

ヴィクトリア・バレット(写真右)、ダスティン・モスコヴィッツ(写真中央)、ビル・ゲイツ(写真左)

ビル・ゲイツは莫大な資産を子どもに残さずフィランソロピーに捧げる。そのゲイツが若年のビリオネアに説いた哲学とは。


世界屈指の資産家、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツと、27歳で米国最年少のビリオネア(2011年当時)となったほぼ無名のフェイスブック(現・メタ)共同創業者のダスティン・モスコヴィッツ。フィランソロピーについて、11年に2人が対談した記事を紹介する。

2人には実は、いくつもの共通点がある。どちらもハーバード大学に通っていたこと。どちらも同大学を中退し、テック企業を起こしていること。そしてどちらも、多くの時間を割いて自身の資産を寄付する方法を熟考していることだ。

モスコヴィッツは2008年にフェイスブックを離れ、ソフトウェア会社のアサナを起業。11年にグッド・ベンチャーズという財団を妻(現在)のカリ・ツナと立ち上げ、ゲイツとウォーレン・バフェットが始めた、ビリオネアたちが少なくとも資産の半分を寄付する「ギビング・プレッジ」にも参加している。

──ゲイツは引退後に、例えばスーパーエンジェル投資家になることもできましたが、なぜフィランソロピストに?

ビル・ゲイツ(以下ゲイツ):そうですね、06年に引退を発表したころには、すでにビル&メリンダ・ゲイツ財団(以下、ゲイツ財団)の仕事を少ししていました。ワクチン開発や農作物の改良、教育の不平等といった問題に興味をもっていました。そして、そういった問題の解決には資金が回ってこないこともわかっていました。誰もマラリアワクチンや結核ワクチンの開発に資金を提供していませんでしたから。その状況のすべてに非常に興味をそそられ、財団を自分の本業にしようと決めました。ずっと自分の財産をどうするべきか悩んでいましたが、明確な答えができてうれしかったですね。

27歳で資産を寄付する決意


──モスコヴィッツは若いのになぜいま寄付すると決めるのでしょう?

ダスティン・モスコヴィッツ(以下モスコヴィッツ):フィランソロピーに乗りだすと公言してから、冷ややかな目を向けられることもたくさんありました。フィランソロピーは、よくても何ら影響を与えない、悪ければ非生産的だと見なす人たちもいます。

しかし、私は「(だからこそ)チャンスがある」と思いました。莫大な資金をもっと上手に使えれば、いまよりかなり大きな効果を上げられるはずです。30億ドルの資金をテック産業に投資するよりも、インフラや教育に投資することで本当に「有意義な変化」を起こすことができます。誰かの人生を恒久的に好転させることができるのです。ひとりの子どもの教育が向上すれば、その子のその後の人生の給与を何十年間も増やすことができます。

──恋人(当時)のカリ・ツナと一緒にフィランソロピーにかかわっていますね。

モスコヴィッツ:数多くのフィランソロピーの活動を提案されたのですが、あまりきちんと精査できていませんでした。そこでカリと話し合い、ふたりの関係が深まるにつれて、そこを彼女が引き受けるとふたりで決めました。カリは以前からフィランソロピーに関心をもっていましたが、それまでは明確にキャリアにしようとは考えていませんでした。
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インタビュ=ヴィクトリア・バレット 写真=ジョン・キートリー 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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