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2022.07.04

ビル・ゲイツとダスティン・モスコヴィッツが語る、贈与の本質と効果

ヴィクトリア・バレット(写真右)、ダスティン・モスコヴィッツ(写真中央)、ビル・ゲイツ(写真左)


──ゲイツの活動のどんなところが刺激になっていますか?

モスコヴィッツ:途方もないスケールの大きさだと思います。「無謀」と言うと否定的な含みがありますが─。

──大胆ということでしょうか?

モスコヴィッツ:そうです。マラリアの根絶やポリオの根絶といった大事業を手がけていること。民間団体がそれを主導できることに、大きな刺激を受けました。それから、よい手本となり、ほかの人たちに働きかけ、彼らがフィランソロピーに踏み出せるように労力を割いて尽力していることにも刺激を受けています。

──ゲイツはほかの若いビリオネアにもギビング・プレッジに参加してほしいと願っていますか?

ゲイツ:マーク(・ザッカーバーグ)にギビング・プレッジの話をしたとき、「若い世代で参加している人はいるか」と聞かれました。私は「いる。35歳の参加者がいる」と答えました。すると、もう一度、「若い世代で参加している人はいないのか」と聞かれてしまいました。

モスコヴィッツ:若い世代と年配の世代の対比に加えて、第1世代と第2世代の資産家の対比も存在します。自分で富を築いた人間と、富を受け継いだ人間とでは、根本的な価値観の違いがあると思います。後者は一族の伝統を継続し続けることなどが必要だと感じています。

ゲイツ:そうですね。ギビング・プレッジでも、第1世代の資産家と資産を受け継いだ人との差は大きいです。

──ゲイツにとって、フィランソロピーについて受けた助言のなかでいちばん役に立ったものは何ですか?

ゲイツ:大切なのは、フィランソロピーは面白くなり得るものだという発想、そして寄付したい取り組みを探し続け、効果が明確ではないものから気兼ねなく手を引くことです。

いまのフィランソロピーは、もしかすると昔よりは少しはよくなっているのかもしれません。ですが、昔も模範となる非常に偉大なフィランソロピストがいました。ロックフェラーやカーネギー、フォードたちがそうです。彼らがあれだけの事業を行ってなかったら、私たちのような今日のフィランソロピストは誰も、フィランソロピーが無謀とも言える大胆な目標を掲げることができなかったでしょう。

ビル・ゲイツ◎マイクロソフト共同創業者。2000年にビル&メリンダ・ゲイツ財団を創設。358億ドル相当の株式を財団に寄付した。21年にメリンダと離婚したが、財団の共同議長は二人で続ける。総資産1306億ドル(22年3月時点)。

ダスティン・モスコヴィッツ◎フェイスブック共同創業者。2004年にハーバード大学の寮でマーク・ザッカーバーグとフェイスブックを創業。同社の株式の2%を保有。08年にアサナを創業し、20年に上場。総資産130億ドル(22年3月時点)。
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インタビュ=ヴィクトリア・バレット 写真=ジョン・キートリー 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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