2人が立ち上げたスタートアップWonderbelly(bellyは「お腹」)は6月29日、同社初の製品、遺伝子組換え不使用でタルク、着色料その他の不必要な化学成分を含まない制酸薬を発売した。しかし、消化をターゲットにした市販薬シリーズを計画している2人にとってこれは始まりにすぎない。
ルーカス・クラフト(31歳)にはこのビジネスに個人的なつながりがある。彼は10年以上にわたり摂食障害と戦っており、胃食道逆流症(GERD)とパレット食道を発症した。いずれも制酸薬による治療が必要だった。何十人もの消化器専門医を受診した結果、彼はこの旅の孤独と無力さを感じたという。「親身になってくれる医者もそうでない医者もいました。しかし、殆どの場合、彼らには制酸薬を処方する以外にできることはありませんでした。情報もあまり得られませんでした。そこで私は、自分でやるしかないと思い、学び始めました」
彼がバレット食道と診断されてから5年ほどになる。喉に前癌病変が形成される状態だ。幸いなことに症状の進行は食い止められ、改善の兆候を見せている。しかし、それにはある犠牲がともなった。ボトルにして何本もの制酸薬のタムズを口にしなければならなかった。
それが彼に、数十億ドル(数千億円)規模の制酸薬市場に目を向けさせることにつながった。この業界は長年ほとんどイノベーションが起きていないだけでなく、薬品には健康によくない成分、たとえばタルク(主成分:含水ケイ酸マグネシウム)などが含まれている。「ジョンソン・エンド・ジョンソンが、タルクの発がん性を巡って訴えられていることを知っていました。だから一生それを食べ続けたくないと思いました」
2020年、ルーカスはパンデミックによるストレスによって、胃酸逆流や消化器疾患を発症する人が増えていることを知り、彼自身の症状も再発した。そこで兄のノアに声をかけ、市販の消化関連薬から問題のある成分を取り除く会社のアイデアを話した。