ウイスキーに続く世界的な酒に? 個性光る「ジャパニーズジン」

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世界のスピリッツ市場で、最も需要の高い商品カテゴリーのひとつといえば、「ジャパニーズウイスキー」だ。だが、このところひそかに注目を集めているジャンルが、もうひとつある。

それは、ジンだ。市場は世界的に拡大しており、今年の売上高は155億6000万ドル(約2兆1200億円)に達する見通し。向こう3年間の年平均成長率は、7.46%と予想されている。

日本では、ジンはこれをさらに上回る成長が見込まれている。国内市場は2015~20年にかけて、25%拡大した。日本ならではの“ジャパニーズジン”がけん引するブームもあり、2015年には26%だった国産のジンのシェアは、2020年には39%となっている。

「ジャパニーズジン」とは?


ジンは穀物を糖化し、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)で香りを付けた蒸留酒だ。人気の日本のジンにはその香り付けに、さらに柚子や緑茶、生姜、山椒といった伝統的なボタニカル(植物、ハーブ・スパイス・果皮など)が使われている。

日本産のジンの先駆けとなったのは、京都蒸溜所が2016年に発売した「季の美」だろう。その後、サントリーが2017年に「ROKU(六)」、2020年に「翠(すい)」を売り出した。ニッカも2017年に「ニッカ カフェジン」を発売している。

パンデミックが生んだジンも


新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに、ジンの製造に乗り出した蔵元もある。日本酒が好きな人なら、数々の賞に輝く岩手の「南部美人」を知っているだろう。およそ120年前、二戸市で創業した同社は、コロナ禍でジンの開発に着手した。

伝統的な酒蔵が、急成長する市場でチャンスをつかもうと新事業に乗り出したのだろうと思った人もいるかもしれない。だが、南部美人の5代目社長、久慈浩介は、それは実際のところ、必要に迫られたための選択だったと話す。

パンデミックが発生すると、バーやレストランは事業を大幅に縮小。同社の売上高も急減した。そして、久慈にとってそれは、単に自社の減益を意味するだけではなかった。南部美人には、代々重要なビジネスパートナーとしての関係を築いてきた米農家を守る方法が必要だった。
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編集=木内涼子

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