ウイスキーに続く世界的な酒に? 個性光る「ジャパニーズジン」

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岩手から米国市場に進出へ


コロナ禍で消毒用のアルコール不足が深刻になると、久慈は新たに蒸留所を建設。余った酒米を使って、医療機関などに製品を届けた。だが、消毒アルコールだけでは、事業を継続することはできない。そこで新たな選択肢として浮上したのが、蒸留酒の製造だった。

ベーススピリッツに酒米を使えば、生産コストが大きな負担になるという問題はあったが、それでも久慈は、ジンを造ることを決意した。「困難な状況のなかで懸命に働いてくれた従業員たちを元気づけるためにも、必要なことだった」という。

米国への輸出開始へ


「南部美人 クラフトジン」は、昨年2月に新設した蒸留所で造られ、8月から販売が開始された。「二戸テロワール」を持つこのジンについて久慈は、「東京でもほかのどこでもない、二戸だからこそ造れるものだ」と語る。

ベーススピリッツには酒米「ぎんおとめ」、香り付けには「浄法寺漆」と、どちらも地元産の原料を採用した。樹皮や小枝などを炙ったことで、ほのかにスモーキーな香りが加わっている(漆の抽出技術「漆掻き」は、2020年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録されている)。

発売以来、「南部美人 クラフトジン」は、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション2022の洋酒部門でゴールドメダルに輝くなど、複数の賞を獲得。今年後半には、米国での発売も予定している。

ジャパニーズジンの人気は、すでに海外でも高まっている。日本政府によると、輸出量は2016年から2021年までの間に、850%増加した。ユニークなフレーバーとともに、市場に参入するプレイヤーが増える「ジャパニーズジン」。今後が楽しみなジャンルだ。

編集=木内涼子

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