宇宙専門のファンドが生まれたわけ
せりか:国際宇宙大学や宇宙ホテルで宇宙が身近になり、そして民間初の有人宇宙飛行に立ち会ったことで、宇宙ビジネスに飛び込むことを決意されたのですね。宇宙ビジネスコンサルタントとしては、どのような活動をされていますか。
大貫さん:まずは、市場を創出すること、あるいはすでにある市場を拡大していくことです。政府主導の宇宙開発と民間の大きな違いは市場です。独立してスペースアクセス㈱を設立して宇宙ビジネスコンサルタントとして市場を目指した取り組みを始めました。政府の予算を中心として発展してきた宇宙開発が民間主導へと移り変わっていくには、市場を広げることが必須だと考えました。また、政府の場合は宇宙開発計画が策定されて予算が決まりますが、民間の場合は資金を調達しなければなりません。2020年4月にスパークスに入社しました。
せりか:なるほど。スパークスは宇宙に特化した「宇宙フロンティアファンド」を運営していらっしゃいます。あまり投資家やファンドのことは詳しくないのですが、具体的にはどのような業務をされているのでしょうか。
大貫さん:投資資金の運用や市場調査、そして出資した企業に伴走して企業の成長を支援をしていくことが主です。支援は企業のステージによって異なりますが、市場開拓や資本計画のアドバイスをしたり、ときには人材の紹介をしたりすることもあります。
せりか:ところで、宇宙に特化したファンドは世界にもいくつかありますが、なぜ生まれたのでしょうか?
大貫さん:宇宙の商業化が始まった頃に、宇宙企業に出資するのはエンジェル投資家(創業期のスタートアップに出資する投資家)がほとんどで、出資額も限られていました。本格的に事業を進めていくにはより大きな金額が必要で、ディープテックに特化したファンドが宇宙企業に出資したり、宇宙専門のファンドが登場したりするようになりました。宇宙産業の発展とともに、産業の成長を促す資本の橋渡しの役割が増してきているように思いますね。
宇宙開発は地球上の課題と紐づいている
せりか:大貫さんが特に注目している分野や出資を決める条件は何かありますか?
大貫さん:世界規模で事業を展開していく上で、日本の技術が活かせる事業なのかどうかは一つのポイントです。例えば、日本が先行して研究開発に取り組んでいた技術や事業は、やはり強いです。技術や人材の蓄積がありますから。SAR衛星や宇宙光通信技術はまさにそうですよね。
(c)ワープスペース
ワープスペースに関して言えば、小型衛星のシステムを丸ごと開発して打ち上げて実証した経験があったことにも着目しました。ひと昔前のように数トン規模の衛星が10年かけて開発されるような世界観だと、投資の対象にはなりにくいです。スピード感が重視されます。
あとはスケーラブルな市場やビジネスモデルと起業家や経営陣の信念や能力、そしてやり遂げる情熱も。さらに、ご縁も重要です。良い企業であったとしても、資金調達のタイミングになければ、出資はできませんよね。