超高速宅配サービスに魅力を感じる消費者がそれほどいない可能性は、Stor.aiによる調査結果発表の前にもすでに示されていた。
2022年3月には、米ニューヨーク市を拠点とする超高速宅配サービスのスタートアップが、1週間で2社も廃業した。そのため、このビジネスモデルの長期的な実現可能性が疑問視されていた。
CNNの報道によれば、配達料ゼロの超高速宅配スタートアップ「Fridge No More」は、売却先が見つからずに廃業となった。その直前には、同じビジネスモデルで運営していた「Buyk」が、サービスを完全停止していた。
最近では、ニューヨーク市とボストンを拠点とするスタートアップ「Jokr」が6月15日に、米国でのサービスを大幅に縮小し、南米での事業に力を入れると発表したと、ニュース配信企業「Morning Brew」が伝えている。
米国以外では、独ベルリンを拠点とする超高速宅配スタートアップ「Gorillas」が2022年5月に、グローバルオフィスの従業員半分を解雇すると発表したと、「Modern Shipper」が報じた。
食品宅配業界のトップ企業とされる「GoPuff(ゴーパフ)」ですら、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期に急拡大したものの、いまは減速しつつある。GoPuffは2022年5月末、在庫を保管する倉庫の縮小を始め、600カ所のうち22カ所で業務を停止、または一時停止した。「The Real Deal」によれば、それらの倉庫では受注量が減少していたようだ。同社は3月に、グローバルスタッフの3%を解雇していた。
とはいえ、ブレーントラストに参加する専門家の一部は、小売業界にはデリバリーモデルが入り込む余地があると考えている。ただし問題は、その手段とターゲット層だ。
ケンブリッジ・リテール・アドバイザーズのマネージングパートナー、ケン・モリスは、「消費者はどんなときでも、できるだけ迅速でラクな方法を好むものだ」と話す。「ファストフードのドライブスルーは、一時的な流行にすぎなかっただろうか。いや、そうは思わない。超高速宅配の事業が波に乗り、Stor.aiの調査で明かされたような低い需要を打破するには、配達とサービスを適切な質で提供しなくてはならない」