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2022.07.14

菅・前首相も応援。世界最高の家庭教師が推す「モノローグでなくダイアローグ」のプレゼン法

菅義偉・前首相(右)、エグゼクティブ・スピーチコーチ/コミュニケーション戦略研究家 岡本純子(撮影=曽川拓哉)

1000人を超える社長や企業幹部たちに、「コミュニケーションのライザップ」ともいえる集中個人講義で話し方をコーチングしてきたエグゼクティブ・スピーチコーチ、岡本純子。「生徒」たちの劇的な話し方の改善ぶりと実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれるカリスマだ。11刷、15万部を超えるベストセラーとなった著書『世界最高の話し方』(東洋経済新報社)の続編『世界最高の雑談力』も6月に上梓した。

その岡本氏が、対象をこれまでのトップエグゼクティブ層から、次世代若手リーダー層に広げ、「世界最高の話し方の学校」を開校した。6月のある金曜日の夜、その特別講義が行われ、20名の1期生たちが都内某所の一室に集まった。

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当夜は開校記念ということで、学校の趣旨に賛同した菅義偉・前首相も駆けつけた。岡本のファシリテーションで、座談会が行われ、地盤・看板・かばんなしで、政治家を志し、総理大臣にまで上り詰めた「運を引き寄せるコミュ力」や、インバウンド(訪日外国人旅行者)施策、「ふるさと納税」創設など、数々の施策を実現した「人を動かす力」について、ざっくばらんに語った。

政策を実践するためのコミュニケーションで気をつけていた点を、「徹底的に傾聴はしながらも、(抵抗勢力の声など)聞かないところは聞かない」「判断の根拠は、本質的に正しいかどうか、それだけ」などと話した。


「世界最高の話し方の学校」、菅・前首相が特別講師として駆けつけた

ちなみに岡本氏は2020年当時、菅氏の所信表明演説を「職人肌の実務派らしくパフォーマンスを排し、具体的な数値や目標の政策を述べた。地味だが安心感のある味噌汁のような味わい」と評しているが、まさにその通りの、あざとさを排した朴訥とした話しぶりは場の空気を和ませた。在任中にはなかなか見せることのなかった笑顔も飛び出し、終始、和やかな雰囲気の中で、生徒と熱いディスカッションを繰り広げた。


1時間近くにわたる菅前首相の講話後、受講生たちからは盛んに質問が飛び出した

「恥ずかしがり屋研究所」で学んだこと


その後始まった「世界最高の話し方の学校」本講義で、岡本氏は「話をする時に緊張する、恥ずかしがり屋であることが悩み」という人へのアドバイスとして、以下のように話した。

──今日お伝えしたいのは、興味のベクトルを相手に向けた、「モノローグでなくダイアローグ」のプレゼン法についてです。

『世界最高の雑談力』にも書いたことですが、グローバルリーダーのコミュニケーション術を学ぼうと渡米した私がまっすぐに向かった先、それはインディアナ大学サウスイースト校の「恥ずかしがり屋研究所」(Shyness research institute)所長、バーニー・カルドゥッチ教授(故人)の元でした。

教授が開口一番、話してくれたのは、「話をする時緊張するのは、あなたの前には『鏡』があるから」ということ。「話をする時もあなたはきっと相手の顔でなく、その鏡ばかり見ているはず。つまり、『人からどう見えているか』ばかりを気にしている。シャイであるとはすなわち、そういう状態のことなのです」と。

つまり「恥ずかしさ」は「自意識過剰」から起こるものだ、と教授は言ったのです。

恥ずかしがりや=ナルシシスト? ずいぶん意外な定義でしたが、たしかに、ハタと思いあたる点はないでしょうか。

緊張している人、恥ずかしがりやの人ほど、人前で話しているのに一人芝居(モノローグ)になっていることが多い。そうでなく、目の前にいる人、あるいは聴衆との対話(ダイアローグ)こそが、本当のコミュニケーションの姿。

恥ずかしさを克服するベストな方法は、自分にばかり関心を向けるのではなく、相手のことを本当に知りたい、相手の話を聞いてみたい、と真剣に思うことです。「好かれよう」ではなく、相手を好きになる。

自分ではなく「相手」に意識を集中し、真摯な興味を抱き、「対話する」。それこそが、恥ずかしさ克服の特効薬といえるでしょう。
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構成=石井節子 撮影=曽川拓哉

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