不動産業界では、かねてからIT化の遅れや生産性の低さが課題として指摘され、2015年頃からデジタル技術を使った不動産テックが次々と生まれてきた。賃貸マンション仲介業者の業務支援ソフトやAIを使った中古物件の価格査定、売り手と買い手のマッチング、スマートキーなど、種類はさまざまだ。
矢野総合研究所が2021年8月に発表したレポートによると、2020年度に6110億円だった不動産テック市場は2025年度には1兆2461億円にまで拡大するという。
VR領域もライバル企業は多い。その中でどのように差別化を図ってきたのか。
ROOVは、新築の分譲マンション事業者から提供される図面をベースとした3DCGのVR内覧システムだ。物件の購入検討者は、ブラウザ上からROOVにアクセス。よくイメージされるゴーグルの着用は不要で、スマートフォンなどで画面操作し、物件内を歩くように移動することができる。
サイズや位置を調整可能なベッドやテーブル、人をバーチャル空間上に置き、実寸サイズの家具配置や生活の導線を考えることもできる。また部屋の窓から見た外の風景や時間帯別の陽の入り具合、さらにはエレベーターや廊下などの共用部も見ることも可能だ。
提供=スタイルポート
従来、未竣工物件の場合はモデルルームに行ったりイメージ写真を見たりすることで、購入の可否を判断するのが一般的だったが、ROOVを使うことで、ユーザーはどこからでも、より具体的な物件情報を得られるようになる。
メリットは売り手側にもある。
販売者からすると、ユーザーの物件への反応や関心度合いは数値化が難しい。商談の手応えがあっても購入に至らないケースもあれば、逆もまた然り。ROOVは、クラウド上で保存された間取図やVRコンテンツ、パンフレットなどの資料を必要に応じてユーザーに共有する機能を持ち、どの資料の何ページを何度閲覧したかも把握できるため、商談の担当者は、個々の興味関心に合わせた前準備や説明ができるようになる。