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2015.06.02

スティーブ・ジョブズの素顔:STORY07 コニー・ググリエルモ




STORY 8 コニー・ググリエルモ (本記事の筆者)

2004年に膵臓の摘出手術を受けたことを告白したあと、スティーブが初めて公の場に出た日のこと。彼はカリフォルニア州パロアルトのショッピングセンターで、新たにオープンするミニストアのお披露目として、私を含む数人の記者と会う予定になっていました。ストアのデザインの特徴は、後方から照明が当てられている真っ白な天井、そして「航空機の格納庫に使用される素材」を用いた、光沢のある継ぎ目のない白い床でした。

しかし、店舗を覆う巨大なカーテンが取り外される直前、彼は店の前に出ることを拒否したのです。理由は、設計図上は素晴らしかった店舗のデザインが、実際につくってみると実用性に欠いたから。そして壁を触れば指紋が残り、床はオープンの準備をする人々の靴で、傷だらけになっていたからだとか。最終的には、説き伏せられたジョブズが記者の前に現れ、幕が下ろされました。

私は、床を見た瞬間「デザインの全行程にかかわってきたのですか?」とスティーブに聞きました。答えは「イエス」。「デザインした人は、床掃除なんて一度もしたことのない人だったのでは」と言うと、不快感を滲ませた目で私を一瞥して店の中へ消えました。

数カ月後、アップルの幹部が教えてくれた話ですが、ストアのオープニングが終わると、デザイナー全員が店舗に戻るよう言われ、這いつくばって白い床を夜通し磨かされたそうです。その後アップルは、店舗の床を現在のデザインでも多用されている、人造石タイルに変えていったそうです。

コニー・ギリエルモ=インタビュー 山崎正夫=イラスト 徳田令子/アシーマ=翻訳

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