チリ、台湾、韓国、ポーランドに投資
中国企業の苦境は2021年にMSCIのインデックスを2.5%下落させたが、トールのファンドは逆に6.9%上昇した。
フリーダムファンドのポートフォリオの21%は、EV(電気自動車)のバッテリーに使用されるリチウムの世界最大級の生産者である「ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ」などのチリ企業で占められている。また、台湾、韓国、ポーランドの企業も上位に入っている。
「自由が保証された国の市場は、より持続的な成長が可能で回復も早く、資本と労働力を効率的に利用できる」とトールは言う。「しかし、これほど早く結果が出るとは思っていなかった」
トールは、もともとロースクールに進むつもりだったが、香港で1年暮らした後、フィデリティのファイナンシャル・アドバイザーとして、最初はロサンゼルスで、次にヒューストンで仕事を始めた。その時、ロシア、イラン、サウジアラビアの顧客から、「自国への投資はテロ集団への資金提供につながるから避けたい」と言われたことが、その後のビジネスにつながった。
2014年に、彼女は娘を育てるためにフィデリティを辞めたが、業界のカンファレンスには参加し続け、フリーダムファンドの構想を練っていた。転機となったのは、毎年夏にメイン州で開催される、経済・金融界の大物たちが集まるサマーキャンプ「キャンプ・コトック(Camp Kotok)」に2016年に参加したことだった。
その会場で、リサーチ・アフィリエイトズ(Research Affiliates)の創業者で、インデックス戦略を提唱するロブ・アーノットと出会ったことが、フリーダムファンドの設立につながった。アーノットはトールを支援することを約束し、後に彼女の会社「ライフ&リバティインデックス」の投資家となった。
2018年、彼女はアルファ・アーキテクトと契約を結び、2019年5月にFRDMというティッカーシンボルで、自身のETFであるFreedom 100 Emerging Marketsを立ち上げた。
ヒューストンの自宅で働くトールは、ケイトー研究所とフレーザー研究所が165カ国を対象に算出する「人間の自由度指数(Human Freedom Index、HFI)」のスコアを用いて、毎年、ポートフォリオを見直している。この指数は、投獄されたジャーナリストの数を含む様々な指標を用いて、各国の経済と個人の自由度を評価するものだ。
「時価総額」は重視しない
2021年の上位の新興国には、台湾(19位)やチリ(28位)、韓国(31位)などが入っていた。一方で、ロシアと中国はそれぞれ126位と150位で、農民の抗議行動を弾圧したインドは、2年前の94位から119位に順位を下げていた。
トールのETFは、ブラジルの鉄鋼大手ヴァーレ(Vale)やチリの林業・エネルギー複合企業のエンプレサス・コペック(Empresas Copec)などの株式も保有している。
2022年に入り、フリーダムファンドの株価は下落したが、ロシアのウクライナ侵攻後の記録的な資金流入によって、運用総額は2021年末の2倍に増えている。
「ロシアが戦争を始めたことで、投資家は中国のリスクにも目を向けるようになった」とトールは言う。
「新興国の市場では時価総額を重視する投資戦略は、うまく働かない。なぜなら、そのような企業は独裁者の資金源である場合が多いからだ。私たちは、そのような問題を解決するためにここに居る」と彼女は語った。