経済・社会

2022.06.23 07:45

ロシアの化石燃料売上が、前年同月比で40%近く増加した理由

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ロシアのウクライナ侵攻を受け、多くの国がロシア産化石燃料に依存する状況からの脱却を試みているが、口で言うほど簡単ではないようだ。

欧州は、ロシアが戦費を捻出するうえで欠かせない資金源を断ちたいという思いがおそらく最も強いだろう。しかし、ロシアとのあいだで確立されてきたサプライチェーンを断ち切ることもまた、極めて困難だ。

欧州連合(EU)は、輸入削減を公言している。にもかかわらず、EUによるロシア産化石燃料輸入の減少率は「-16%」であり、これは、世界平均の減少率である-15%を若干上回る程度だということが、フィンランドの研究機関「エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)」が公表したデータで明らかになった。

世界規模で見ると、ロシアからの化石燃料輸入量が減少する一方で、化石燃料の価格上昇が生じている。その結果、ロシアが頼りとする主要な収入源のひとつをカットしようとする試みが困難であることが、再び浮き彫りにされている。

国・地域別に見た、ロシア産化石燃料の輸入削減状況(2022年2-3月から5月)*
国・地域 減少率
米国 -100%
スウェーデン -99%
スペイン -56%
フィンランド -56%
日本 -50%
EU28カ国 -16%
世界平均 -15%
韓国 -14%
ドイツ -8%
オランダ -5%

*絶対値ベースで、削減割合が上位の国18カ国のグラフから抽出、季節調整済み

EUでは、スペイン、フィンランド、リトアニア、ポーランド、エストニアが、ロシア産化石燃料への依存度を少なくとも半減させた。また、特異な例として目を引くのがスウェーデンだ。同国は、ロシア産化石燃料の輸入を事実上、停止した。一方で、ドイツ、オランダ、イタリアは、削減量の世界平均である-15%に届いていない(ドイツは-8%、オランダは-5%、イタリアは-13%という減少率となっている)。 

ただし、こうした相対的な減少率は、絶対的な観点から見て、同じ重みをもつわけではない。当該国の規模に差があるためであり、これまでのロシアへの依存度がまちまちであるためだ。

CREAのリポートによれば、米国は個別の国として、輸入の絶対的削減が最大となっている。米国がロシア産化石燃料を完全にストップしたことで、2022年2-3月から5月までに、ロシアの1日あたり売上は約3300万ドル減少した。

さらに、ロシアは同期間、EUの輸入削減によって1日あたり1億1400万ドルもの売上を失った。EU全体の輸入量の減少率は-16%と相対的には小さいものの、米国による影響を大きく上回る数字だ。

ボイコットされた原油はインドが購入


ロシア産の割引された原油を購入し、他国に代わってロシアに注ぎ込むお金を急増させているのがインドだ。インドは、2022年2-3月と5月のあいだに、1日あたりで6500万ドルを超える額のロシア産エネルギーを購入している。

全体的に見るとロシアは、ウクライナ侵攻後にロシア製品の排除が始まって以来、化石燃料による売上を1日あたり1億ドルという規模で失っている。

ただし、ロシアが値引きする一方で、世界市場では2021年半ばから価格が容赦なく上昇してきたのに加え、ウクライナ侵攻後はそれに拍車がかかった。つまり、ロシアはなおも、化石燃料の輸出額で見ると多額の割増分を手にしている。

先述したような減少(取引量における減少と、ロシアの値下げによる減少)があるにもかかわらず、エネルギー価格が世界的に上昇したため、2022年5月におけるロシアのエネルギー輸出による売上額は、前年同月と比べると40%近くも増えている。そのため、「ロシアのエネルギー輸出を凍結させようとする取り組み」が効果を上げられていない感は否めない。

翻訳=ガリレオ

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