関係筋によれば、この動きは事実だという。徴用工訴訟では昨年、韓国地裁が三菱重工業と日本製鉄(旧新日鉄住金)の韓国内資産の売却を命じており、現金化の作業が最終段階に進んでいる。果たして、この動きは問題解決につながるのだろうか。関係者の話をまとめると、大きな前進には違いないが、この先、まだまだ難しい問題が待ち受けている。
「大きな前進」としたのは、韓国政府が問題解決に向けて動き出したからだ。今年5月までの文在寅政権時代は「三権分立で、政府は司法に介入できない」「被害者に寄り添った政治が必要だ」などと主張していた。韓国大統領府や外交省がまったく努力しなかったわけではない。当局者の1人によれば、文在寅政権当時も政府関係者が原告団と接触し、問題解決の道を探ろうとしていた。この当局者は「文在寅は決して日本が嫌いだったわけではない。ただ、青瓦台(当時の大統領府)には色々な立場の人がいた」と言葉を濁した。大統領府や外交省には当時、強硬な反日主義者がいたのも事実で、こうした足並みの乱れが、韓国政府としての問題解決の動きを止めていた。
韓国政府の元高官も「文政権は問題解決の動きに耳を貸さなかった。尹錫悦政権が問題解決の動きを始めたことには大きな意味がある」と評価する。おそらく、今後は、韓国政府が日本企業に代わって原告団に賠償金を支払う「代位弁済」を軸に話が進むだろう。