ファイナンスの世界において、「信用」、それはさながら、「社交界への切符」 のようなものだ。どんなに優秀でも、どんなに魅力あふれる人であっても、地位や勲章、称号、爵位がなければその厳選された世界に入れないように、どんなに素晴らしい経営者でも、事業内容や技術、サービスが卓越していても、信用なくして選ばれる立場にはなれない。
もちろん、いまやインターネットやSNSを駆使し、自身の信用性を拡張することは決して難しいことではないだろう。けれど、個人や企業単体でやることには限界がある。だからこそ、J-Adviserの力を借り、誰もが認める「切符」を手にする必要があるのだ。そして、その信用こそが「上場」なのである。
上場は企業の生存戦略
いま、この激動する世をサバイブしていくのは、どの企業にとってもたやすいことではない。グローバル化が進み、コンペティターは国内企業だけではなくなった。また、テクノロジーの進化によって、思いもよらぬディスラプションが起きたりする。変動要因が多く、先が読みづらくなるなかで、経営者は難しい舵取りを迫られている。
しかし、生き残る策はなくはない。企業のコアコンピタンスを大事にしながら、時代に合わせて柔軟に変化する。それは、ダーウィニズムの進化論、そのものだ。時代の求めるニーズや、コーポレート・ガバナンス、内部管理体制の有効性を満たすために、属人的ではない、組織として、サステナブルに生き残っていくための企業の変容のプロセスがそれにあたる。
そして、進化論の自然淘汰だけでは説明がつかない、もうひとつの見方。それは、ダーウィンが魅了されたクジャクの羽、その目立つ青緑色の目玉模様が導く性淘汰「クジャク理論」。「上場」という、人々や社会へのわかりやすい自己開示としての文様たる記号は、企業が生き残っていくうえで選択される一助となるだろう。
現在、85社とともに、上場に向けて並走している日本M&Aセンター。最後に展望を聞いた。
「『Exceed AIM』を東証に宣言しているんです。TPMのモデルになっているロンドンAIMが、現在、上場数900社弱。であるなら、そこを抜きにいこう、と。2030年には1000社の上場を目指しています」
今後、日本M&Aセンターだけでも、年間で40社くらいのペースで上場させていきたいと三宅は語る。
ポーカーで最高額のチップが青色だったという理由から、アメリカでは優良株のことを「ブルーチップ」と呼ぶ。毎年、2桁の企業がそのブルーチップの世界への切符を手にしていく。そんな先にある未来が魅力的でないわけがない。
みやけ・すぐる◎1952年神戸市生まれ。日本オリベッティを経て、1991年に日本M&Aセンターの設立に参画。数百件のM&A成約にかかわり「中小企業M&Aのノウハウ」を確立し、品質向上と効率化を実現。2008年より現職。