日本全国の中小企業の数は、現在、約380万社。そのうち、245万社の経営者が、65歳を超えている。さらに、そのうちの127万社には、後継者がいないと言われている。
日本の総企業数の99%以上を占める中小企業が抱える問題は、日本の問題そのものだ。「これを救わなければいけない」。これまで三宅たちはM&Aというスキームを使って、日本の地方が抱えるこの事業承継問題に取り組んできた。だが、そのたびにM&Aスキームだけでは抜本的な解決にたどり着けないのではないかという思いが去来するようになったという。
そして、その解決策として、かねてより胸に引っかかっていた「上場」という考えが浮上してきた。企業が上場することによって、人々への信頼をつなぎ、選ばれる要素になりえ、そこから活力が生まれる──。中小企業が東証TOKYO PRO Marketに上場するための支援サービスを開始した。「地方創生によって、日本を創生する」、はっきりとしたパーパスの明示だった。
TOKYO PRO Market(TPM)とは、東京証券取引所が運営する株式市場のひとつだ。
大きな特徴として、上場に際し、マザーズやJASDAQのように、一定の「利益の額」や「株主数」「流通株式比率」などの数値的なハードルが一切ない。また、株主を特定投資家というプロに限定することで、上場企業側の負担やリスクを軽減している。
しかし、上場の効果は一般市場とまったく変わらないのが魅力だ。上場企業に認められる東証での盛大なセレモニーの開催、4桁の証券コードの付与、そして、日本経済新聞への株式欄への掲載……。さらには、上場企業としてガバナンスやコンプライアンスの体制が整備され、タイムリーな決算開示や監査法人による会計監査も行われる。
つまり、そうしたTPMへの上場プロセスを経て、企業の知名度や信用力は格段にアップする。その結果、人材の確保がしやすくなるだろうし、取引の拡大、金融機関からの借り入れもたやすくなる。
また、これまで信用力や十分な担保のない中小企業は、物やサービスの購入、不動産の賃貸などの契約を行った際に、その返済や支払いを第三者である個人が保証しなければならなかった。往々にして、代表者やその家族・親族などにその保証が求められていたのだ。しかし、上場をすると、M&Aが実行しやすくなり、事業を引き継ぎやすくなるというメリットもある。