その主な問題点のひとつは、サステナビリティがブランド構築における泥沼になってしまったことだ。
リサーチ会社ファースト・インサイトが米国の消費者を対象に行った調査によると、企業が競い合うかのように(調達やコンテンツ、リサイクルなどについて)繰り広げるマーケティングは、「信頼につながるよりも混乱を招く」と答える消費者がますます増えている。
衣類に関しては、サステナビリティについて「十分な情報が得られていない」と考えている消費者が40%にのぼることが、投資信託フィデリティ・インターナショナルによる米国での最新調査で明らかになった。消費者はまた、購入先ブランドの労働慣行や環境活動についてさらなる情報を得ることに「非常に関心がある」という。
小売業にとっては、容易ならざる新たな時代と言える。
新発売のフットウェアが、どんなにクールで魅力的かを宣伝するだけでは不十分だ。ブランドは、以下について説得力のあるストーリーを語らなくてはならない。
・製品はどこで作られたのか。
・店舗まで、どのようにして輸送されたのか。
・誰が製造したのか。
・どう製造されたのか。
・原材料は何か。
・古くなった製品はどうなるのか。
・最重要ポイント:競合ブランドと比べたときに、何が優れていて、どんな価値があるのか。
2022年3月の段階では、消費者に経済的な余裕があったため、さほど問題はなかった。「サステナビリティを促進できる製品であれば、値段が多少高くても購入する」と答えた消費者が大部分を占めていたからだ。しかし、インフレによる打撃を被った3カ月後の現在、我々はみな、考えを改めている。
環境のために行動しなければならないと言いながら、実際の行動はともなわない――そうした消費者の「言行のギャップ」は、世界的な現象となっている。
確かに、サステナブルな製品を求める消費者の声は圧倒的だ。しかし、ガス料金や食費、住宅費が記録的に高騰しているという報道を来る日も来る日も耳にしていれば、サステナブルだからといって、より値の張る製品を買うことはないだろう。経済は少しずつ不況へと向かっている、と述べる専門家が増えていることも報じられている。
いずれにせよ、最近の消費者は、「使えるお金」については旅行や外食など、過去2年にわたって我慢してきた「体験」に注ぎ込んでいる。「新しいソファ」など、モノの購入は後回しとなっている。