筆者がロンドンとニューヨークで先ごろ出席した業界の会合では、企業幹部らがそうした課題についてあれこれあて推量を繰り広げては、「今後はどうなるのか」について話し合っていた。
サステナビリティに向けた動きは、もう後戻りできない。企業では、会議のたびにサステナビリティが議題に上がり、あらゆる予算に組み込まれている。サステナビリティはもはや法律のようなものであり、何兆ドルもの資金が投資される根拠なのだ。産業規模の野心的な環境・社会・ガバナンス(ESG)プログラムに膨大な資金が投じられ、長期的な予算に織り込まれている。
コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーが発表した最新リポートによると、小売企業の年間資本予算におけるサステナビリティへの取り組み分は、今後5年間で少なくとも10%増加すると予想されている。一方で、一部のカテゴリーでは、売上原価率が最大で8%上昇するとも予測されている。薄い利幅が常態化している企業なら、絶句しそうな数字だ。
では、誰がその分を負担するのだろうか。
マッキンゼーのリポートは、「短期あるいは中期的には、資本利益率の低下を受け入れる投資家もいるかもしれない」とする一方で、そうした出費が限界を超え始めた場合には、「株価を罰する投資家も出てくる可能性がある」とみている。投資家が小売企業の株式に対して、いわゆる「グリーン資産プレミアム」を与えるようになるのは、何年も先になる可能性がある。
いまのところサステナビリティは、暗号資産の状況とやや似ている。中身は不透明だし、高額だ。
それが何物かについては、目で見ることも、感触を確かめることもできない。ほとんどの人は、それが何物かについて適切に定義できない。それでも、調査を行えば、ほぼすべての人が、サステナビリティに「もっと力を入れるべきだ」と答える。
かつて小売業界に身を置いた著者としては、消費者に対して、「もっと」とは具体的に何を意味するのかを問いかけ、その答えを実現する方法を探り出すことをおすすめしたい。