MEET YOUR ART FESTIVAL 2022「New Soil」は、日本のアート界の福音となるか 代表・加藤信介がこのフェスに込めた思い

エイベックス・ビジネス・ディベロップメント代表取締役社長の加藤信介

5月13〜15日にかけて、恵比寿ガーデンプレイスで開催された「MEET YOUR ART FESTIVAL 2022 “New Soil”」。「国内最大級のアートとカルチャーの祭典」と銘打たれた新しい時代の横断的カルチャーを取り上げた本イベントを手がけたエイベックス・ビジネス・ディベロップメント代表取締役社長の加藤信介に、会期終了直前にインタビューを実施。このフェスの起点から、今後の展望に至るまでの話を聞いた。

──「MEET YOUR ART FESTIVAL 2022 “New Soil”」開催の経緯をお教えください。

僕たちは2020年12月に、アートプロジェクトとしてアート専門メディアのYouTubeチャンネル「MEET YOUR ART」と、それに付随したECサイトを開設しました。

その背景には、グローバルで7兆円規模とされるアートマーケットに対して、日本のアートマーケット全体が約2500億円、国内の現代アートに至ってはおよそ700億円程度しかないという市場規模でのギャップがあります。こうしたなかでも、経営者や若い芸能人の方といったアーリーアダプターをはじめ、アートへの興味や潜在需要があることを強く感じていました。

また、「MEET YOUR ART」プロジェクトを進めていくと、多くのパートナー企業が自社の課題解決やSDGsへの活動に際してアートを取り入れたい、と考えていることもわかりました。ユーザーも企業もアートへの興味やニーズをもちながらも「どうやってアートと向き合っていいかわからない」という現状があったのです。

現状の日本の美術教育には、アートに対して「感じて鑑賞する」といった空気も根強くあります。しかし、アーティストの活動や作品の背景にはしっかりとしたコンセプトやストーリーがあり、それは言語化できるものです。

多くの人が興味をもちながらもアートの見方やアーティストとのコミュニケーションのとり方がわかっていないので、こうした鑑賞者や購買者とアーティスト、ギャラリーとの間にわかりやすいブリッジをかけることで、世界のアート市場とのギャップを埋められるはず。そうすることによって、日本のアートマーケットはいまよりも広がる可能性があるのです。

また、日本では毎年美術大学から優秀なアーティストが多く輩出されているにもかかわらず、国内マーケットの小ささや業界の特殊な構造もあって、アルバイトや別の仕事をしながら制作活動に励んでいるといった実情もあります。日本のアートの市場規模を拡大できれば、アーティストたちが本業だけで食べていけるような環境を用意できる可能性があるはずなのです。

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「MEET YOUR ART」が注目する26名のアーティストが参加したART FAIR/POP UP SHOWエリアでは、来場者がアーティストと対話を楽しむ場面も。

──「MEET YOUR ART」は、音楽をはじめとしたエンターテインメント業界で知られるエイベックスがアートプロジェクトを手がけるということでも意外性があったと思います。

アートも広義ではエンターテインメントだと思いますし、エイベックスではミュージシャンやタレントなど、エンターテインメント業界で人の才能や可能性を最大化したり人気者にすることをずっと手がけてきました。そのノウハウや知見をアート業界でも展開できるだろう、と考えています。
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text by Michi Sugawara|photographs by Kayo Igarashi|edit by Yasumasa Akashi

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