ムンバイのHDFC証券の自動車アナリスト、アディティア・マカリアは、EV市場への参入遅れによる不利を指摘する。EV市場では、すでに多くの競合他社がひしめいているからだ。市場で優位を得ているヒーロー・エレクトリックや、躍進中のオラ・エレクトリックとシェアを争っていくには、差別化を図っていく必要があるというのだ。
ヒーローは、21年1月には二輪車生産累計1億台の記録を打ち立て、ガソリン車ではインドのオートバイ業界で依然としてトップの座にある。だがスクーターでは市場シェアを奪われつつあり、高級オートバイ市場のシェアもわずか5%にとどまっている。
ムンジャルは、インドの電動二輪車市場での優位を争う今後の戦いを見据え、こう言う。
「競争がなければ面白くありません。競争相手が多いほどやり甲斐があります」
ヒーロー・モトコープのインド国内での実績(販売台数とシェア)
ヒーロー・モトコープはインド最大の二輪車メーカーであり、資金力も充実している。だが、このところその販売実績、シェアともに停滞しており、順調とはいえない状況にある。特にスクーターでシェア低下の傾向が顕著となっている。近年、海外進出にも力を入れており、2025年まには輸出を売り上げの15%まで拡大する計画。
身内のライバル
甥のナビーン・ムンジャル率いる「ヒーロー・エレクトリック・ビークルズ」は、EV二輪車ではインド最大のシェアを誇る。ただし同社は、10年のグループ分割によってヒーロー・モトコープとは完全に別会社となっており、EV業界で最大のライバルとなりそう。
追い上げる新鋭
インド国内の配車サービス企業「Ola(オラ)」の子会社で、共同創設者バビッシュ・アガルワルが率いる「オラ・エレクトリック」は年間1000万台が生産可能なEVスクーター工場をインド南部に建設。21年7月に発売を発表すると予約が殺到、12月に納車を開始した。
海外の協力会社
「Gogoro(ゴゴロ)」は台湾のEVスクーターメーカーで、交換と再充電が可能なバッテリーを提供するサービスを提供している。21年4月、ヒーロー・モトコープはゴゴロとの提携を発表し、第2のEVモデルではゴゴロのバッテリー交換テクノロジーを使うとしている。
A Milestone 1億の王台へ
2021年1月21日、ヒーロー・モトコープの累計生産・販売台数は1億台を突破。累計5000万台の達成には29年かかったが、そこから1億台に達するのに要したのはわずか7年だった。コロナ禍ではいち早く工場を閉鎖したが、ロックダウン解除後の生産台数回復は早かった。二輪者のオンライン販売にも着手した。
Hero MotoCorp ヒーロー・モトコープ ◎1984年創業。前身は自転車メーカーのヒーロー・サイクルズとホンダの合弁による二輪車メーカー、ヒーロー・ホンダで、4ストロークのオートバイ「CD100」など各種モデルで成長を遂げた。2010年に一族で事業を分割、同年末にホンダとの合弁は終了。現在もインドの自動二輪市場で37%のシェアを誇る。
Pawan Munjal パワン・ムンジャル ◎ヒーロー・モトコープの会長兼CEO。ヒーローグループの創業者の息子で、10年にグループを4分割した際に現在の事業を引き継ぎ、社名を改めた。アジアのほかアフリカやラテンアメリカ、中東の40カ国に販売網を広げ、研究開発拠点も国外へ拡大。インド工業連盟(CII)、インド自動車工業会の役員を務める。