マネックスも、ISAKも同じように出井さんのサポートあっての今ではないか。
つまりは、出井さんは、なにか新しいことをやろうとする若者を、いつも一番最初に本気で応援してくれる方だったと言える。
ビジネスの世界において、最初に応援してくれる人は非常に大事だ。
そういう意味において、出井さんの応援を受け、現在、活躍されている方も少なくないのではないか。
私から見た、経営者としての出井さんは、ある時期、不当に低く見られていた時期もあった。
しかし、ソニーが今日ある「原点」を作ったのは出井さんだ。
20年前に、「デジタルドリームキッズ」といって、デジタルの時代が到来し、世の中を大きく変えると提唱していたのは他でもない出井さんだ。
それがもたらす産業構造の変化についてもかねてから指摘していた。
だから、「企業はデジタル空間で価値を作っていく会社に変わっていかないといけない」と常々おっしゃっていた。
当時は、それが社内にも評論家からも理解されなかった。
しかし、今思えば、これは圧倒的な先見性だ。
日本の主流派の経済人にも関わらず、この流れを当時見ていたのは出井さんくらいではなかったか。恐るべし先を見る力だったと思う。
もう一点、ガバナンス改革への貢献も大きい。
日本で一番最初にガバナンス改革をしたのはソニーだった。
執行役員制を入れて、社外取を中心としたボードでやっていくということを導いたのは、出井さんだった。
つまり、今日叫ばれているDXの源流にも出井さんがいるし、コーポレートガバナンス改革の出発点にも出井さんがいるということ。
リーダーとしての出井さんは、もっともっと高く評価されて然るべきだ。
通常、あまりにも先見性が高いものは、「荒唐無稽」と言われてしまう。
しかし、出井さんにはその荒唐無稽の先にある未来が見えていたのだ。
数々の荒唐無稽を出井さんがローンチさせてきたことで、20年経った今、ようやく皆が理解できる環境が追いついてきた。
過去20〜30年という中において、最も重要で、最も尊敬すべきリーダー、それが出井伸之さんだったのではないか。
そういう意味においては、出井さんを失ったということは日本において大変大きな意味を持つ。
もっと長く、元気でいてほしかった。
そうすれば、出井さんが応援する若者や、新しい企業、新しいビジネスがもっと出てきたはずだからだ。
だからこそ、私たちは、その出井さんがやってこられたことを継承していかなければならない。
自分たち自身も引き続き、必死で価値を作り出していくということは勿論、今、荒唐無稽なことをしようとしている若い世代を応援していくということが大切だ。
それは、ビジネスであれ、教育であれ、社会課題解決であれ。