各種報道によれば、岸田首相はNATO首脳会議に出席する方向で調整を始めたという。だが、自民党関係者によれば、岸田首相はなお、悩んでいるという。すでに政府与党内が「6月22日公示、7月10日投開票」で参院選を行う方向で動き出しているからだ。岸田首相は6月26日から28日までドイツで行われる主要7カ国首脳会議(G7サミット)に出席する。「日本が頼れる多国間の枠組みはG7だけ」(外務省幹部)という状況から、G7欠席は考えられないが、G7とNATO首脳会議をハシゴすると、ほぼ1週間、選挙期間中の日本を留守にすることになる。自民党関係者は「総理は、党内から、総裁(岸田首相)はどこにいったんだ、という不満の声が出ることを気にしている」と話す。
ただ、世間では自民党の堅調ぶりが伝えられている。党が春先に行った独自調査によれば、野党で勢いがあるのは、日本維新の会程度だった。党関係者は「2人目の当選が確実とは言えない東京選挙区など、一部を除けば、おおむね悪くない情勢だ」と語る。岸田首相の支持率も、共同通信社が5月21、22両日実施した全国電話世論調査によれば、政権発足最高の61.5%を記録したという。岸田首相が1週間不在だからといって、急激にこの流れが変わるとも思えない。
そもそも、今回のNATO首脳会議は日本にとっても重要な機会と言える。外務省幹部は「総理が出席を渋れば、日本はウクライナ危機を欧州と共有してくれないのか、という声が出る。そうなれば、将来、台湾有事などで日本の安全保障が危機に陥ったとき、欧州諸国に支援を求める力が弱くなる」と話す。日本の安全保障が万全とは言えない今、NATO首脳会議に出席するのが、日本の首相としての務めだろう。