米国ベンチャーキャピタルやテック起業家たちの間で「Web3.0」という言葉が語られるようになり、ブロックチェーン技術を中心に、巨額の資本と才能が投下され始めています。
彼らのなかでは、「巨大企業GAFAに支配されたネットを個人に取り戻そう」「よりユーザー主導の新しいネットや社会を作ろう」という、ヒッピー的なカウンターカルチャーが生まれ、共感を集めています。このムーブメントに、私はかつてどこかで見た懐かしさを感じています。
なぜなら、本書が発刊された2006年にテック業界の中心だった「Web2.0」と、今回のWeb3.0は、ともに「巨大な体制・システムから個人に力を取り戻そう」「より人間的な社会を創っていこう」という人間回帰的な思想が根底にあるからです。 著者の梅田氏は、米国シリコンバレ
ーに拠点をおくIT企業コンサルタントであり、私の起業にも大きな影響を与えました。
梅田氏は、Web2.0の思想を若者に伝えるため、日本の若者を当時のイノベーションの聖地シリコンバレーに招待して、活躍する人たちの仕事ぶりや考えに直接触れる機会を与えてくれました。私たちは三日三晩、寝る間も惜しんで米国に住む日本人と議論を繰り返しました。
そして、彼らの生き生きと自らの価値観を語る姿が、参加した我々に問いを投げかけたのです。同調圧力の中で個性を消し、自らを規格化して生きるのか、それとも人と人との違いこそが価値になるWebの進化に賭けるのか、と。
帰国後、皆と同じリクルートスーツを身に着け、就職活動をしていても、頭に浮かんでくるのは、突き抜けるように晴れたシリコンバレーの青い空と、米国で活躍していたインターネットのフレーバーをまとった人たちのことばかり。ツアーをきっかけに、インターネットが同調圧力の強い空気を劇的に変化させてくれるテクノロジーだと気づいたことが、弊社の創業の原点となっています。