その原体験を踏まえ、スポーツチームのキャプテンシーのあり方を追求すべく、トップアスリートに対してリーダーシップの発揮の仕方を深掘りしてきました。サッカー日本代表キャプテンを務めた鈴木啓太氏、ラグビー日本代表キャプテンを務めた廣瀬俊朗氏を始め、戦歴のキャプテンとの対話を重ねるなかで、そのキャプテンシーの要諦はビジネスにおけるリーダーシップ、特に中間管理職が備えるべきリーダーとしてのスキルに関するヒントが数多く詰まっていることにあらためて気付かされました。
今回は、トップアスリートが発揮するリーダーシップの要諦からビジネス視点で示唆の抽出を試みたいと思います。
パフォーマンスを左右するキャプテンの力量
同じ競技でも、チームによって選択すべき戦略や戦術は異なります。監督やコーチ陣は手持ちの戦力を踏まえ、あらゆる場面を想定して策を練り事前準備に勤しむわけですが、指導者たちが綿密に練った計画や準備が功を奏すかどうかは、フィールド内でプレーする選手たちの動きに委ねられます。
それだけに、刻々と変化するチームの動静、試合状況を当事者として察知し、試合を有利に進めるために他の選手に的確な指示を与え、チームの士気を高めるための精神的支柱であるキャプテンは、試合結果を大きく左右する重要な存在です。
特に、スポーツにおいて絶対的な権力であるメンバー選定の権限を持つ監督と違い、何も権限を持たないキャプテンはチームを統率し、同じ方向に向かわせるために全人格的な能力が求められます。その要諦はプレーイングマネージャーたる中間管理職が発揮すべきリーダーシップと重なると考えるからです。
こう申し上げると、華やかなイメージをまとう彼らと、企業の中間管理職との間にどんな共通点があるのかといぶかる方もいるでしょう。しかし次の項目を見てください。これを見れば両者は非常によく似た責務を負っていることがよくわかります。
【 チームスポーツにおけるキャプテンと企業の中間管理職の共通点 】
・メンバーの選抜権、人事権を(ほとんど)持たない
・現場の指揮官として組織戦略の成就と目標の達成に責任を追う
・純粋な管理者ではなく自身もフィールドに立ち、プレーイングマネージャーとしてのパフォーマンスが求められる
世間の注目度はわれわれ会社員のそれとは比べものになりませんが、彼らの役割を「組織目標の達成を強く求められるプレーイングマネージャー」と捉えれば、ビジネスの最前線で戦うわれわれと共通点があると感じていただけると思います。
企業の中間管理職同様、フィールド内で陣頭指揮を執るキャプテンは、自身はほとんど何も権限がない中で、才能や闘争心にあふれる個性的なメンバーたちをひとつにまとめ、世界的な大舞台で数々の歴史に残る成果を出しています。
それはなぜか。
そこにこそ中間管理職が体得すべきリーダーシップのヒントが隠れていると筆者はみています。
チームスポーツで成果を残すキャプテンたちが実践する3つのこと
サッカーの鈴木氏やラグビーの廣瀬氏など、キャプテンとして名高い選手たちは、日頃よりメンバーに対してどのような接し方を実践し、個性豊かな選手をまとめていたのでしょうか。各人から異口同音に「パーパス」というキーワードが発せられました。