ビジネス

2022.06.05 11:30

アスリートが発揮するキャプテンシーが、ビジネスと共通する理由


【 パーパス(存在意義)を定めるプロセス 】


・チームが目指すビジョンやパーパスの言語化

・チームのビジョン、パーパスの共有と個人目標への落とし込み

・ビジョン、パーパスを規範に則った個人指導の徹底


スポーツ競技の面白さは、仮に同じ戦略や戦術、メンバー、モチベーションで試合に臨んだとしても、相手チームや試合当日の状況が少しでも違えば、試合経過も結果もまったく違うものになることにあります。そのことからもわかるように、選択の多様性に依る部分が少なくありません。だからこそ人々はスポーツに魅了され、一つひとつのプレーに心動かされるのです。

それほどまでに不確実性に満ちた世界であるため、戦略や戦術に正解はなく、個性の強いアスリートに対して、各プレーの是非について議論を尽くしたところでチームの結束は生まれようがありません。互いが信じる正しさをぶつけ合っても、出口のない〝神学論争〟に陥ってしまいがちです。だとすると、チームは何を拠り所に結束を図るべきなのでしょうか。

統率力に優れたキャプテンたちが口をそろえて言うことがあります。プレーの意義を短絡的に試合の勝敗に結びつけるのではなく、勝利を積み重ねた先に実現したいチームのビジョンや、他のチームにはない独自のパーパスを関係者全員で定義し、理解する重要性です。

ビジョンはそのチームが目指すべき目標であり理想像、パーパスは自らのプレーや振る舞いを顧みる際の指針であり価値観と言い換えてもいいでしょう。

チームワークの醸成に優れたキャプテンは大なり小なり、選手やチームの指導者たちと対話を重ねて意思の疎通を図ろうと試みるもの。それが統一感のあるプレーを生み、結束力を高める効果があることを本能的に理解しているからです。

しかし結束の礎となるビジョンやパーパスなき対話は、どうしてもその場しのぎの対応に陥りがちです。

かくいう筆者も、高校時代その重要性を理解できていませんでした。一面的な見方に過ぎない自らの意見や監督の意向を、世の理のごとく伝えてメンバーから反発を食らったり、メンバー通りのプレーについての見解の相違をまとめることができず苦しんだ経験があります。

ビジョンやパーパスには人々を結びつけ、目標に向かって進ませる力があるのを知ったのは、コンサルタントになってから。優れたアスリートのキャプテンシーのあり方を知ったあとでした。

プレーイングマネージャーが〝キャプテンシー〟を発揮するための条件とは


「ビジョンやパーパスを言語化し組織に浸透させるべき」と言われても、おそらく何から手を付ければいいかわからない方も多いでしょう。
まずやるべきは「自分たちは仕事を通じて何を実現しようとしているのか」「自分たちのチームと隣のチームとの違いは何か、どこにオリジナリティがあるのか」についてメンバー全員で話し合うことです。

1 on 1や全体ミーティングを通じて、認識が重なる部分とギャップが際立つ部分を可視化した上で、チームのビジョン、パーパスを定めるだけに留まらず、個人の役割やミッションに落とし込むまでやりきることが重要です。

【 ビジョンとパーパスの要件 】


・チームメンバーから共感を得られる内容であること

・ビジョン・パーパスが具体的で、チームメンバーの行動につながる内容であること

・ビジョン・パーパスが各選手のパフォーマンスを評価できる内容であること

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文=中村健太郎(アクセンチュア)

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